水陸両用車チャレンジャー零5号で行く湯西川ダックツアー

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家族で栃木県に行って参りました。もう少し具体的に書くと、栃木県北西部の湯西川と云う「平家の落人伝説」が残る山奥の温泉街に向かったのでした。湯西川は豊かな自然に囲まれた山間部の集落なのですが、東京・浅草から東武鉄道に乗れば特急で2時間30分程、鬼怒川上流に設けられたダム建設に伴って作られた立派な道路経由で日光より1時間、鬼怒川温泉から30分と気軽にアクセスできる具合です。

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戦後間もなく、昭和二十二年(1947)に東日本の広域を襲ったカスリーン台風。甚大な被害を受けた鬼怒川流域の対策事業として昭和三十一年に五十里ダムを建設。その10年後には川俣ダム。更に17年後には川治ダム。平成二十四年(2012)には湯西川ダムと立て続けにダムが完成し、日光の山奥だった山間部は国内有数のダム銀座となったのでした。

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青い夏空のもとに緑萌える五十里湖の眺め。冬であれば湖面は全面凍結し、真っ白くなった湖と薄茶けた山肌の木々が静かに見られる景色なのですが、夏は蝉の大合唱と共に暑苦しいまでの緑の匂いを発していました。この辺りは旧五十里村(会津藩/福島県)と旧栗原村/旧藤原村(栃木県)の堺にあたる場所で、昔は湯西川渓谷と呼ばれた場所でした。

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ダム建設には侃々諤々の議論があるも、水底に沈む集落の人達は湯西川湖に最も近い川戸平に整備された住宅に移動。湯西川の集落への道は最近まで、どん詰まりの"奥地"へと続く道といった雰囲気だったのですが、湯西川ダム建設に伴う開発で不釣り合いに感じられる立派な道路を持つ場所となり、冬であろうと楽々にアクセスできる観光地へと変貌を果したのでした。

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湯西川温泉の宿に向かう前に、今回は名物アトラクションである「湯西川ダックツアー」でダム湖に水陸両用車でバッシャーンする事に。はじめは川戸平の「湯西川 水の郷」を訪れるも、道の駅・湯西川がその出発地だと教わり急遽戻ってきたのでした。此処には新藤原駅(栃木県)と会津高原尾瀬口駅(福島県)を結ぶ野岩鉄道・湯西川温泉駅があり、観光客の立ち寄る道の駅と併せて賑わいを見せる場所です。湯西川駅は1日の利用者数が100人にも及ぶ、野岩鉄道の始発と終点駅を除きナンバーワンという人気駅なのです。

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いすゞの中型トラック・フォワードのオリジナルな姿は見る影もないまでに改造した水陸両用車が道の駅に停車していました。大阪に本社を持つ日本水陸観光社が運行する車両・チャレンジャー号で、乗員乗客計42名の「レジェンド零FIVE号」です。乗り込みは収納式階段のみで、車体の荷台が満載喫水線となる設計のようで、客席やヘッドライトはその上に位置する様になっております。車体にはダックとカッパのハーフ「ダッパ君」が飾られていました。

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登録車種はバス、用途は旅客船ですので、車体後部にスクリュープロペラ1基がありました。船の行先を操作する舵がスクリュー後部に見えないので、動力機そのものをスクリューと共に動かして推進力へ偏向させる仕組みの船のようです。水陸両用である為に運転手は陸上と水上の2種類の免許が必要で、運転席にも水陸両方の操縦ができる特別仕様だと後ほど説明がありました。

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道路の川岸側に立つ黄色いシャツのスタッフの誘導を受けて、満員のお客さんを載せたレジェンド零FIVE号が出発。座席は乗車順に車両後部から座っていく方法が取られており、自分達は車両真ん中あたりとなりました。川に架かっている赤い橋は野岩鉄道の湯西川橋梁で、ちょうど列車が川をガタゴト渡っていたのでしたが上手く写真を撮る事に失敗(T^T)

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道の駅・湯西川より121号線を五十里湖沿って走り、トンネルを経由して3キロ先の川治ダムへと向かいました。窓のないオープンエアのバスは涼しい風が通り抜け、トンネルの中を通り抜け抜ける時には震える寒さを感じる程。トンネルを抜けて暫く走り、最初の目的地である川治ダム資料館に到着。

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川治ダムは黒部ダムと同じく堤体が弓形となっているアーチダムで、水圧をダム両岸の岩盤で支える構造になっているのだと説明がありました。高さは140メートルもあり、壁面の中程に見える横幅1メートル程のダム管理用通路(通称キャットウォーク)を歩く事ができるのがダックツアー参加者の特典です。こういった場所は通常は入れない筈ですが、国土交通省の協力もあり実現可能となったのだとか。

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工事現場で見られる白色い安全ヘルメットを被り、10人も乗るとギューギュー詰めとなてしまう狭い作業用エレベーターで移動。まるで防空壕のような湿気の高いダム壁内の通路を抜けると、目の前に大きな壁が突如出現しました。あまりの巨大さで、長さ320メートルの通路の中程に見える二階建ての建物が壁に貼り付けた小箱にしか見えない(゚o゚;

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キャットウォークは高さ60メートルのところに架けられています。60メートルというと日本橋・三越本店ぐらいの高さで、下を覗き込むと...。壁面が地面より垂直ではなく上の方が迫り出している、上下でも湾曲しているのが理解ります。案内の方曰く、「ダムの上から誤って物を落としてしまっても、自分達の頭上には落下してこないので安心です」との事。それにしても、こんな高所での作業も慣れてしまえば朝飯前となるのでしょうか? 長く下を見続けていると奈落の底へと吸い込まれそうで怖い、怖い。

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ダム堤壁上部に放水口となるクレストゲートが見えます。案内ガイドの方曰く、「年に何度か放流イベントがあり、100メートル以上の高低差のある巨大な滝が突如現れる」そうです。ダムの放流はこれまで1度も実際に見た事のないので、一度機会を作らなくてはと思ったのでした。令和元年10月に東日本広域を襲った台風19号の時には隣の川俣ダムと川治ダムが緊急放流をするしないでニュースになりました。この場所でも下流に被害を出さない為に、限界に近付くダム湖の水と懸命に闘った人達いたはずです。

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このキャットウォークですが薄い網目板でできていて、薄氷上を歩いていると言うか、何処にクレパスがあるか知れずの氷河の上を歩いているかの様な気分になりました。

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川治ダムより下流にある川治温泉郷が見えました。天和三年年(1683)にこの地方を襲った地震により山塊崩壊が起き、男鹿川がせき止められて最初の五十里ため池ができたと記録が残っています。享保八年の台風にて"ため池"が決壊を起こし、川の名前が鬼が怒ったような川(鬼怒川)と迫力ある名に変えたとまで言われる大災害時に川治村/藤原村は全滅しています。その時に鬼怒川上流の流路が変更となった為、偶然にも発見されたのが川治温泉でした。

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超巨大なコンクリート壁を堪能した後には、ダックツアー最大のお楽しみであるダム湖にGOの時間。このダム湖へと続く道は集落水没前からあった生活道路で、この水没道路が残っているので専用のスロープを新設する必要がなく、ダックツアーが成り立っているとも言える道です。水上では緊急脱出に備えてシートベルトを外す事が求められました。案内人より「脱出経路は窓がないので、何処からでもOK。モーターボートが湖面にスタンバイしているので、浮き板に捕まって待っていてください」との説明を受けた後に、全員でカウントダウンをして勢い良く川面へバシャーン!!

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この水陸両用車(バス)の水面上の乗り心地は通常の船と比べて劣るのではないかと思っていたのですが、さもあらず。たいして揺れる事もなく翠色の湖面を岸沿いにのんびりと進んで行くのでした。真夏の日差しのもと納涼船の様にゆるりゆるりと、右舷側、左舷側の両方のお客さんに岸辺の風景を見せようと向きを変えながら進んで行きました。

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このダム湖の岸には鹿や猿に羚羊、猪に月の輪熊などの野生動物が闊歩しているらしく、岸辺をじっと眺めているとチラホラ見つける事ができました。赤丸のところに鹿に映っているのが見えますでしょうか?  案内人の方の説明によるとダッパ君人形も岸壁の何処かに複数置かれているとの事でしたが、それは発見する事はできませんでした。