埼玉県寄居町、旧秩父往還に沿って建つ商人宿・山崎屋旅館

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埼玉県に行って参りました。埼玉県北西部、荒川の流れが狭い山間部から解放され、関東平野に注ぎ込む谷口に"寄居"と呼ばれる古い町があります。江戸時代には、寄居はその周囲で生産された薪、炭、絹、真綿等を江戸まで運ぶ中継基地の役割を果たし、現在でも秩父鉄道、JR八高線、東武東上線と3つの路線が乗り入れる交通の要衝となっている場所です。

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寄居域には荒川を挟んで右岸の鉢形町と左岸の寄居町がありました。15世紀に建てられた鉢形城は、小田原の北条氏康の4男・氏邦が整備拡張し現在の規模まで拡大したと言われており、鉢形町(荒川の南で道路が黄色くなっている辺り)はその鉢形城の城下町として発展し、そして豊臣方の攻撃による落城にて終焉を迎えました。荒川の北側に目を移すと寄居町があり、江戸時代には100軒以上の家々が街道沿いに軒を並べ、町には様々な物が集まり活況を呈していた場所で、こちらが現在の寄居町へとつながっていきます。

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中山道熊谷宿から秩父市街を経て、甲斐国甲府までを結ぶ旧秩父往還に面して建っているのが今回お邪魔した「山崎屋旅館」です。創業は明治8年(1875)で、現在の女将さんで5代目とのことでした。山崎屋旅館は宿泊業以外にも食事処も営んでおり、表通り向かって右側が食事処。鮎料理や「戦国ハーぶ〜丼」なる豚丼がウリらしく、お客さんが入っているのが見えました。

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その食事処の反対側に宿泊者への入口があり、玄関のガラス戸をガラガラと横に引き中に入りました。「すみませ〜ん」と奥に何度か声を掛けるも薄暗い空間にこだまするだけで反応なし...。予約日を誤ってしてしまったかと、手帳を見直していると年輩の女性が対応に出てこられ、「予約をお願いしたxxです」と告げると理解して貰えたようでひと安心。

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荷物を持って急勾配の階段を上り、黒光りする廊下を歩いて部屋に向かいます。山崎屋旅館は間口に対して奥行が長い造りで、大通りに面した建物は大正期、その奥の建物は昭和期と敷地いっぱいに建て増しをしていった姿が見られます。

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大きな窓越しに通りを眺めると、ひっきりなしにクルマが通って行く忙しない雰囲気。寄居、よいよい、良い眺め。調べてみると秩父鉄道の寄居駅開業が明治34年(1901)、東武線が大正14年(1925)、八高線開通が昭和8年(1933)となっているので、山崎屋旅館はこれらの鉄道開通のだいぶ前に開業しているのに興味を惹かれました。

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昔の山崎屋旅館の白黒写真(大正時代)。山崎屋旅館は大正時代に建て替えされており、昭和期に増築をしているそうです。

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宿泊した部屋がこちらでした。柱は蜘蛛の巣が張り、歩くと畳が沈み込む湿っぽい一室。100年を越える江戸から続く旅籠のような宿には沢山泊まってきましたが、これまでは綺麗に手入れをされている場所が多かったので、それを常識と捉えていました。山崎屋旅館は玄関口から散らかり具合と良い、掃除がなされていない部屋の様子といい、冷房が効かなかったならば、「すみません、急な用事ができたので帰ります!」と言っていたかも知れない酷暑日でした。

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窓より寄居駅の方角を眺める。目の錯覚なのか、屋根も少し傾いているような気がしました。屋根上にちょこんと顔を出している小屋根は風呂場のようです。お風呂はいつでも入れるという、有難い言葉を聞いていたので館内探検を兼ねて、行ってみることにしました。

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まずは急な階段を一歩一歩降りていきます。脚元ばかしに気を付けていると途中で頭をゴツンとぶつけたり、降り切った廊下にも宿の荷物があったりとなかなか油断ができません。

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ちょっとした中庭部分を見ながら、ガラス戸の廊下を奥へ奥へと進んで行きます。廊下の途中から新しい板張りに変わり、金ダライ並ぶ洗面台は昭和の面影を感じさせられます。

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ここの風呂場の最大の見所は傘天井のはずですが、外からの異物落下防止の為かネットの様なものが張られておりました。傘天井は現代ではあまり見ることもなくなったので、こんな天井を見上げながらの熱いお湯も愉しいものでした。