山形県村山のじゅんさい沼(大谷地沼)で、じゅんさい摘み

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おもひでぽろぽろ、黄色い紅花の咲く七月。家族で山形県に日帰りで出掛けて参りました。始発の山形新幹線に乗り込み、山形駅に8時57分到着。JR東日本の駅に置かれていた観光パンフレット「東北デスティネーション」の中に「じゅんさい摘み体験」を見つけ、出発3週間前に電話にて予約をしていたのでした。現地の天気は曇りのち雨と天気予報では言っていましたが、晴れ女の娘と晴れ男の自分が行くので天気は何とかなるだろうと高を括っていたのですが、駅前のレンタカー屋で手続きをしている時に自分の携帯電話に見知らぬ番号より着信。「天候の回復の見込みがないので本日のじゅんさい摘み中止にしたい」と男性の声が聴こえてきたのです...

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じゅんさいで最も有名な場所はといえば秋田県。八郎潟の北側にある三種町が有名ですが、山形県や福島県等の生産地ぜもじゅんさい採り体験をさせて貰える場所があります。自分達がこの日に向かったのは山形駅からクルマで1時間足らずに位置する、山形県村山市北部の「じゅんさい池(大谷地沼)」もそのひとつです。場所は吾妻山に発し、酒田で日本海に注ぐ最上川の最大の難所と知られる「隼」の近く。子供達にとって初体験だと意気込んでいたのですが、再挑戦をするとなるとなかなか難しいと悩んでいたのでした。

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午前中にしていた紅花摘みの最中も、昼食で板蕎麦を頂いていた時も空模様が気になっていて、「この天気なら(じゅんさい摘みは)できるのではないかな?」と空を見上げていました。諦め切れず、蔵王温泉へ向かう前にダメもとで約束の時間だった午後1時前に現地を訪問する事にしたのでした。じゅんさい池の隣りの建物「太高根じゅん菜採取組合」の受付に顔を出してみると、同じ時間帯に予約をしていたと思しき男性数人がおり、天候も好転してきたので体験可という話しが聞こえてきたのでした。至誠天に通ず。「じゅんさい摘みできるって〜」と、車で待つ妻子供に声をかけました。

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杉林の手前に150m x 400mぐらいの沼地が広がっています。初夏の雨上がりなので、濃い緑の匂いが漂っていました。受付で簡単なじゅんさいの採り方を教わると、木製の箱舟へ向かってロケットのように走り出した兄妹。ふたり揃ってダダダっと走る後ろ姿を見ていると、より幼かった頃の姿が瞼に浮かびます。水面まで緑に覆われた沼は1.5メートル程と深さあまりはないものの、安全のためのライフジャケット装着が必須でした。

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箱舟に妻娘と息子+自分の2組に別れて1畳ほどの大きさの舟に乗り込みました。両膝を着いて前傾姿勢での作業となるのでクッションマットを出発前に頂きました。操舟は簡単なもので、1本の棒っこで沼底を手前に引き寄せながら突いて前に進みます。じゅんさい摘みは水面で作業をする必要性から舟の乾舷が低く、沼そのものが浅いので舟底を平らにしているのだと思うのですが、それゆえに不安定でした。岸から離れる前に既に露水していたのですが、管理人の方が気にしてない素振りでしたのでそのまま出発しました。

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じゅんさいは世界中で見られるスイレン科の水性植物で、国内でも北海道から沖縄まで広く近年まで分布していたのだそうです。後日、妻が職場でじゅんさい摘み体験をした話したところ、何処に行ったのかを聞かれ、「山形県」と答えたところ驚かれたらしいです。訊ねた側は東京近郊の地名を答えとして期待していたらしく、初夏の風物詩ともいえるじゅんさいが、関東で生産していないのは意外だったのだそうです。この大谷地沼も近辺の水田に除草剤が用いられた昭和40年代に一時壊滅状態となったものの、富並川からの水路を整備したところ天然のじゅんさいが復活。質の良い天然物が採れるということで、宮内庁からの注文を受けるまでになったという経緯があるのだろか。

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じゅんさいは沼底の土中で根を広げ、伸びた茎から水面に小判型の葉を浮かべる浮葉植物で、初夏の頃に水中の未開の若葉と芽の部分が食用とされています。世界中で広く分布しているものの、日本、中国、韓国の3カ国が主な消費地となっています。スーパー等では若葉だけを水漬けした状態で瓶詰め/袋詰めで販売されているのが常なので、全体像を見る機会は少なく、目をしばらく慣らさなくては、水中のどこに若葉が隠れているのか分かりませんでした。水面の葉をすこし手で払って、目標を見つけたら親指と人差し指で挟み込み、親指の爪でプチッと切り収穫するのです。

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ゼラチン質に包まれた新芽とクルンとした小さな葉がじゅんさいの高級な部分です。良いじゅんさいは「ヌル」が沢山ついていて、太っているものだとか。これを時間の許す限り集めていくのがこの日の体験内容でした。一葉、一葉を現在でも手で摘み取る作業は大変なので、農家の方でも丸一日掛けての収穫量は10kgほど。ひとり1kgまで持ち帰りができるのですが素人の自分達では遠く及ばず(沢山採れた場合には組合が100グラム80円で買い取りして貰える)。現役のじゅんさい沼が国内に数える程しか残っていないのは、環境悪化だけでなく報酬が見合わないというのも大きな理由だと推測できます。じゅんさいの国内消費の8割が中国からの輸入モノで占めていますが、その出荷元の中国ですら低賃金のために後継者がおらず日本国内と同じく作業を長年続けてきた高齢者だけ頼る状況で、一般家庭の食卓から消えるのも遠くない事でしょう。

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「あった、あった、こっち、こっち」と収穫に精を出す娘っこ。種巻きはしないが収穫だけは人一倍頑張る性格です。元ボート部の母と収穫の鬼・娘の女性チームには男性チームが敵わなう筈もなく、雨が再度降り始めてもサッサと岸へ向かった自分達と違い粘るだけ粘って収穫していたのでした。摘み取り体験をしていた時間は自分達(息子+父親)が35分ほど、妻娘が45分ほどでした。

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自分達で摘んだじゅんさいを水を切った後に軽量して貰い、ビニール袋に入れてお持ち帰りです。最盛期の6月には直ぐにバケツがいっぱいになると聞き、訪問時期を誤ったかと思いつつ、手土産に必要量の不足分を購入いたしました。農地新幹線直参にて自宅に持ち帰り、小さめな葉は三杯酢に、大きめの葉は味噌汁。将来は超高級珍味だと自分に言い聞かせながら、茎のシャキシャキ感とツルっとし触感を楽しみました。子供達には「味ない」と不評でしたが...