旧旅籠街だった馬喰町にできた「トレインホステル北斗星」に宿泊

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北斗星の寝台にて一夜を過ごして参りました(≧▽≦)ゞ。ブルートレイン北斗星は平成27夏に最終運行を既に終えてしまっているので、勿論ホンモノの寝台特急ではなく、JR東日本都市開発が開発し、廃校等の遊休施設を宿泊施設として再生を手掛けるアールプロジェクトが運営する北斗星をモチーフとしたトレイン・ホステルです。

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ホステルのある日本橋馬喰町は隣接する横山町と併せて東京で最大の問屋街を形成していた場所で、現在でも繊維業を初めとする多くの問屋が見られる地区です。江戸時代には関八州を管轄する郡代屋敷がこの地に置かれ、五街道のひとつ日本橋から白河までを結ぶ旧奥州街道に沿い、江戸時代の馬喰町は旅籠がズラリと並ぶ江戸の玄関口でした。

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トレインホステル北斗星は寝台特急・北斗星の始発駅だった上野駅からも程遠くない、JR馬喰町駅に直結した築40年以上のオフィスビルをホステルに転業利用し開業しました。馬喰町は東京の中では知名度の高くない場所ですが、東京の表玄関たる東京駅から電車で4分。秋葉原と両国に挟まれた場所で観光客にとっては理想的な場所だとも言えそうな地区です。その馬喰町に隣接する横山町で既にホステル「IRORI」を運営していたアールプロジェクトとビル所有者・JR東日本都市開発が協業で始めたのがトレインホステル北斗星です。

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北斗星を特別な列車と位置付けていたJRが直接開発に絡んでおり、そのホステルの内部には実際に北斗星で使用されていた本物の部品が多数使われています。「オハネ25 231」と書かれた本物っぽい車号プレートに、3号車を表しているかのような表示が3階の寝室入口のドア横にありました。
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ドアを開けると、寝台が並ぶ空間に出ました。この宿の主な顧客は北斗星の"聖地"として訪れる鉄道好きだとばかしと単純に捉えていたのですが、実際には外国人旅行者が大半というのに驚かされました。立地の良さと低価格からか、此処を拠点にして東京観光をしている様で、色々な国の言葉が聴こえる様子は大陸横断鉄道にでも乗っている気分です。

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開放型のB寝台のようなボックス内部はこのような感じ。上部寝台用の金属製のハシゴが通路奥にあり、「このハンドルを両側に引けばハシゴになります」のプレートは本物の北斗星から移設したらしい古びた感じでした。上部寝台には転落防止柵ではなく、転落防止の紐と、JR側に北斗星への想い入れが強い人が開発に加わっているのが伝わってきます。

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寝台の番号表記の「311 上△下▽」も本物の北斗星にあったプレートを模倣したカタチ。二段ベッドの構造部分も寝台列車の雰囲気を大事にしながら設計したのがよく分かります。この様に作り手の想いがハッキリと伝わる宿泊所は珍しいと思うので、大変気に入ってしまいました。

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自分が予約したのはトレインホステル北斗星で2部屋のみ設けられている(鍵の掛からない)個室です。個室とはいえ、入口はカーテン1枚で区切られているだけで、天井部が開放型なので周囲の音はよく聞こえており、電話の着信音やタイ語のビデオ鑑賞をしている音が流れ込むような個室でした。

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内部は北斗星の寝台ロイヤルをモチーフとしたと思われる茶系色でまとめた部屋。窓際には実車から移設したと思われる椅子、小ぶりなテーブルとライト等が備え付けられており、寝台上部には折りたたみ式小物置きテーブルも有りました。自分の妻のように鉄道好きな人間であれば、「もはや北斗星だ!! 揺れていないのは馬喰町駅に訳あって停車しているからだ」と主張しそうな空間...。入口そばのオーディオパネルは飾りものですが、ボタンを押したら、車内チャイムでお馴染みのハイケンスのセレナーデが聴こえてきそうです。

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6階は共有スペースで洗濯機/乾燥機とシャワーブースが並んでいました。北斗星のレストラン・グランシャリオに並んで買い求めたシャワー券では不要で、綺麗な施設が使い放題と豪華極まりない状態。脱衣スペースには実車の通路にあった本物の鏡がさりげなく置かれていました。

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2階の供用スペースは北斗星のレストランから移設した椅子、テーブル、ライトが並ぶ鉄道ファンにとっては夢空間。突き当たりのカウンター横のドアもグランシャリオの入口ドアそのもので、吸い込まれるように入ってみると..。

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北斗星の洗面台にあった三面鏡がズラリと並んでのお出迎え。北斗星では小樽の北海道ワインが醸造した葡萄酒に車体がラベルに印刷されたハウスワインがあったなと思い出すも、このホステルには食堂もなければハウスワインも置いてないと少し寂しいともろです。それにしても、トレインホステル北斗星は至る所に北斗星の実部品が用いられており驚かされました。線路を走るガタンガタンとのリズミカルな振動は無理だとしても、消灯の時間だけで良いので、北斗星で録音した音を流して欲しいと思いました。寝台に腰掛けて、目を瞑ると、北国訛りの車掌さんの声、「本日も寝台特急・北斗星をご利用頂き、誠に有難うございます。東北線、津軽海峡経由札幌行き...」を体験したいです。

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動かない車窓から外を眺めると新動通りがよく見えます。明治期には横山町が問屋街としての発展を極めるも、馬喰町は江戸からの旅宿街としての顔を維持していました。しかしながら、上野駅や大正の初めに東京駅ができた事により東京へと至るルートが大きく変更され、長く続いていた旅宿も馬喰町から新しい東京の玄関口へと移って行ったり、問屋に転業していき、馬喰町は旅宿街から問屋街へと変貌を遂げていきました。そんな経緯のある馬喰町に鉄道会社であるJRが旅宿を開き、しかも、一度は役目を終えたブルートレインを再び用いて営業しているのは、偶然にせよ面白いと思ったのでした。