旅客機ボーイング777の機長席に座る小学生の息子、空高く飛んでいけ

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乗り物の好きな息子はパイロットになりたいと幼稚園の頃に言っていました。綺麗なCAさんが大好きで、飛行機に乗って旅行に行くと最後尾ギャレーでCAさんを独り占めは当たり前、空港内で歩くCAさん達にイキナリ「おねいさん、ボクのケータイ番号知りた〜い?」と果敢にアプローチする術を3歳児にして身に付けていた猛者でした。

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クラブ機のセスナで伊豆諸島・新島へ行った時に、自分達のあと直ぐに調布飛行場からの定期便が到着。「あの人達、自家用よ」と降りてくる若い女性客の声が聞こえ気を良くする単純な息子...。飛行機も着陸アプローチ以外は離陸から旋回、上昇下降は自分ひとりで出来ると調子に乗って周囲に自慢していました。

「おとうは隣りで見ているだけで運転はしないで大丈夫」と余りにも自信ありげだったので、品川にある飛行機シミュレータークラブ「スカイアート・ジャパン」に連れていってみました。少し難度の高い設定で、天狗の鼻を少し折る企画を考えたのです。

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スカイアート・ジャパンは本格シミュレーターや上の写真のエアバスA320の機内を再現した空間提供、各種航空グッズ販売を主とするビジネスを展開する会社です。2年前に設立され、代表者はトルコの方です。

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この日に息子の担当をして頂いたのは、その会社代表のアルパ・アブドラさんでした。「空港のこの滑走路を出発して、海の上でぐるっと回って元の空港に戻ってくる」との説明を真剣に聞く息子。やはり、大型で本格的な設備と初の外国人先生という状況に、いつものオチャラケは通じないなと察知したようです。

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出発前に記念の1枚。いろいろな場面で記念撮影をしていますが、毎回大きくなったなと感じて涙腺を緩めてしまいます。更に大きくなった大人の姿も最近は少しづつ見えるようになってきました。彼が将来本当に操縦士になり、ひとりの乗客としてその機体に乗れる機会があれば、その日は人生最良の日になるだろうと想像の翼を広げてしまいます。

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長年人類の憧れであった空。高く、速く、空を飛ぶことは何より愉しく美しい。飛行機の操縦は習いさえすれば誰でもでき、ライト兄弟が操縦方法を確立してから数多の人達が空を飛ぶ術を獲得してきました。自分が初めてソロ(単独)飛行で離陸した時は、離陸までの緊張感から解かれて独り機内で歌っていました。何の歌だったかは忘れてしまいましたが、飛行場周辺を1周して着陸のアプローチ前までは高揚して歌っていたと記憶します。たぶん、自分以外の人達も初めては同じだったのではないでしょうか?

あまり知られていないようですが、人を載せて空を飛ぶ飛行機はキットで販売されているものを購入して自分でコツコツ組み立てることもできます。自分は上位にあたる操縦ライセンスを持っていたのでほぼ無試験状態でしたが、操縦の講習と試験を受けた上で、自作した飛行機を航空局に申請すれば実際に飛ばすこともできたりします。

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スカイアート・ジャパン社のシミュレーターはボーイング777-300ERでした。実機は数百名の乗客を載せ、10,000キロ以上を飛行する大型旅客機。シミュレーターのソフトウェアは汎用のマイクロソフト・フライトシュミレーター等ではなくボーイング社純正と非常に本格度の高いものです。聞こえるエンジン音もボーイング777の実機から採取したもので、照明に用いられているのも本物の航空機用と凝りまくり。

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その機長席(進行方向左手)に息子が座り、右手の副操縦士席にアブドラ教官が着席。羽田空港の滑走路34Rを推力をあげていき離陸するシーンです。離陸前に息子が「操縦桿がこれ(スティック式でない)だから運転できる」と私に小声で呟いていましたが、表情を盗み見るとカナリ緊張している様子でした。離陸速度に達した後に教官の合図で操縦桿引く息子。グラスコクピットのAI(姿勢指示器)の水平線から上2本目ぐらいのラインで高度を上げていけば良しとの父親の助言をキッチリ守り、なかなか堂にいった感じで逞しい。

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右側に向かへとの合図を教官から受けて、城南島あたりの上空でお台場方向へと右旋回中です。レインボーブリッジが見えています。右側に20度バンクぐらいの角度でしょうか? 空中を飛行する航空機には機首の上げ下げ(操舵桿を前後)、機首の左右(足元のペダル)、機体の左右への傾き(操縦桿を左右)の3つの動きがあります。息子はこのうち足のペダルで操作&エンジンの出力の大小による推進力(操縦席レバー)と3軸の動きの関係を知らないので、純粋に操縦桿のみでの操縦ですが、ここまで信じられないぐらいに非常にスムースです!!

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遠くに東京ゲートブリッジが見えてきました。ここで教官より息子への過大な褒め言葉を頂きました。何を褒められたかと言うと、操縦している機体の上下、左右の姿勢維持の精度に驚いたそうです。直進時であれば高度も100フィートも変わらないと...。教官には息子はフライトシュミレーター・ゲームは一切したことがなく、固定翼機は上背が足りないので(外が充分に見えず)基本的に計器類を見て操縦しているからだと思うと答えました。

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身長130cm少しの息子の視線の高さに合わせて前方の写真を撮ると、彼の目線で見えるのはこんな風景です。計器板が視界の半分より上にあり、前方視界は殆どないに等しく、離陸、上昇、巡航時には見えません。これは大型機だけでなく、子供用航空機というものは世界中の何処にもないのでセスナ機C172等の小型機でも同様です。

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少しでも高くが見えるように座布団+正座と涙ぐましい努力をしていても前方が見えておらず。そこで彼が編み出したのが計器+左右窓の風景で判断して操縦する方法でした。父親から方位130度で高度3,000フィートを維持してと言われれば、姿勢指示器で過度の上下左右にならない様に姿勢を作りながら計器板の方位計と高度計を見て徐々に追い込んでいく方法、"計器飛行"を自ら編み出したのでした。

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途中で「出発した空港はどこかわかる?」と教官の質問に対し、「あそこにある、羽田空港」と迷わず答える息子。「あっちに調布、こっちにホンダ、そっちが成田」と指さす方向は概ね正しく、これには教官だけでなく自分も驚かされました。幼い頃より「考える地図」と道路地図のことを呼び、どこかに行く時には走行中に地図と見比べていたり、妻がクルマを運転している時には助手席でナビ役をしているとは聞いてはいましたが、上空の景色からの位置関係を把握しているのには「お〜」と感嘆の言葉しかでません。

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飛行機の操縦に慣れない人がすると、右に傾き過ぎた等を外の景色から判断して操縦桿でなんとしようとする(有視界飛行)ですが、息子はバッサリと外の風景からの情報を切り捨てて、操縦桿を動かして言われた数値に合わせるためのゲームと捉えているところに大きな違いがあると後部で見ていてハッキリと分かりました。

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「あそこの光っているところに降りるのでしょ、2つ白で2つ赤にして」。侵入角指示灯こと通称PAPI。3度の角度で降下していくのが適正角度とされている着陸で、滑走路端に設置された横に4灯並べたライトの操縦席からの見え方で侵入角を判断する古典的な着陸装置です。白4灯だと高すぎ、赤4灯だと低すぎ(危険)。息子曰く、「白2つと赤2つで、ぴったり〜」。

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西側にある滑走路34Lに着陸するのかと思っていたら、出発した滑走路34Rへと指示が出て慌てて移動。そんな状況下でも5度程の降下姿勢を保続けようとするのは立派。更に足下げを自分でやりたいと主張する等まだまだ余裕がありそうでした。東京湾に顔出すアクアラインの換気塔を越えて空港が迫り来るなか、一生懸命に首を伸ばして滑走路端と白2赤2ライトを確認しようよしています。

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デデーンと着陸しました。最後の方は自分も熱が入ってしまい、「あとは待っているだけでOKとか、機首を上げて無理に失速させなくても勝手に接地するから見てるだけで良いとか...」と、着陸までに色々助言をしてしまう反則をしてしまいました。息子が真剣に取り組む姿を見ると無条件でつい応援してしまう親バカです。

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着陸後は教官が駐車スポットまで誘導してくれました。最後に「地上で操縦桿を引くとクルマのサイドブレーキになるんだよ(嘘)、引っ張ってごらん」と言うと、そういうものかと操縦桿引っ張る息子。それに、合わせてエンジンを切ってくれる優しい教官。操縦室を出ると「Good Job!!」とアブドラ教官が息子をまた褒めており、俺はやったぜと息子はご満悦な様子でした。

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藤井聡太七段の活躍でブームとなっている将棋に目覚め、週1回クラブに息子は通っています。この1年でメキメキと力を付け既に5級まで昇級し、プロ棋士になると今年になり言い始めました。パイロットにせよ、サッカー選手にせよ、プロ棋士にせよ、父親としてできることはしたいと思っています。

赤ん坊の頃より階段から落ちたりしないかと心配で後ろから見守ってきましたが、その小さく可愛らしかった背中もだいぶ大きくなってきました。最近ではその背中越しに見える"未来"が文字通りに眩しく、これから、どんな事にも挑戦できる素晴らしさを羨ましく思ったりします。少し挫折をさせてとやるかと考え連れて来たのでしたが、そんなことは操縦室での子供の真剣な眼差しを見て忘れてしまい、「息子よ、空高く飛んでいけ!! 」と最後には応援していました。