東京下町の三味線屋「向山楽器店」さんにて箸づくり体験

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東京江戸川区の平井に家族でお邪魔して参りました。荒川と墨田川に挟まれた墨田区と江東区からなる"大島"の中には「平井島」と呼ばれる"小さな小島"があり、この島(矢印箇所)は荒川を挟んである江戸川区の飛び地だったりします。自分にとって平井は、自分の両親と仲の良いご夫婦が現在も平井で商売をされており、子供がいなかったそのご夫婦は自分のことを特に可愛がって頂いたと聞いています(スミマセン、幼い頃の記憶はあやふやです)。ですので、現在でも年に何度か家族4人で顔を見せに行く場所だったりします。

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その平井には琴・三弦の「向山楽器店」というお店があります。以前は現在地よりも駅に近い場所にお店があったのですが、駅前再開発にて現在地に移転。向山楽器店のご主人は東京都伝統工芸士であり、「開運! なんでも鑑定団」で和楽器担当として出演されてた事もありました。TV出演以前にご主人にもお会いした事もありましたが、移転後のお店にお邪魔するのはこの時が初めてでした。

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江戸時代には庶民に最も身近な楽器であった三味線は、右肩下がりを続けて国内での製造台数は現在1,000棹程/年と言われております。"雑音を除き、"単純で大きな音が商業的に好まれる時勢も受けて、直近の50年での需要も10分の1にも減少。業界最大手である八王子の「東京和楽器」も今年廃業を決定するなどの衝撃的なニュースも飛び交う水準まで達してきています。個人経営でなはなく、商業ベースでの三味線生産は維持できない時代になりつつあり、他の多くの業界同様に後継者となる人は限りなく少ないのが現状です。

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人材難ばかしりでなく、材料となる品々も枯渇寸前です。糸巻や撥に使用されてきた象牙や鼈甲はワシントン条約で規制。明治期より既に上杢材は不足している状態であったと言われますが、棹に用いられるインド産の紅木も昨今でが国際取引規制に当たり、家具材としての中国の旺盛な需要もあり日本には入って来なくなりました。胴部分張る皮(犬、猫)も国産ではなく、現在は東南アジアより輸入している皮を使用している状態であり、三味線は全て海外材でできていると言っても過言ではなさそうです。自分の妻が学生の頃には、自宅近くで三味線用の猫皮を庭で干しているのを見た事があらしいのですが、昭和の人間の話しなので...

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今回は平井の「向山楽器店」に端材をつかった箸作り体験でお邪魔したのでした。三味線の棹に用いる木材は花梨、紫檀、紅木と音の響きの良い密度の高い木材が選ばれています。"さわり"と呼ばれるビビリ音を一の糸と棹を僅かに接触させる事により独自の残響音を出す為に、沖縄の三線(さわり無し)よりもカリッとした木材が好まれています。三味線屋でなぜ箸作りかと言うと、この三味線や琴の端材から箸を作る行為には切る→削る→磨くという基本作業が盛り込まれている為に職人修行の手始めとなるのだそうで、ご主人は若い人達が三味線に触れる機会を増やす活動の一環としてされていると伺いました。

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職人ひとりで一杯という作業場に4人押し掛けての作業開始となりました。頂いた木材に紙ヤスリを用いて、箸全体をヤスっていきます。自分の記憶が正しければ120番→240番→400番と段々と目の細かいものに変えながら作業していきました。一見直線に見える箸もヤスリをかけていると指先の感覚で凹凸が微妙にあるのが感じられ、単純の様に見えても左右箸を均等なカタチにするのは至難の業だと気が付きます。ご主人が磨かれる時のうねる様な手の動きが凄いΣ(゚ω゚ノ)ノ

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神ヤスリの後は竹ベラで箸の表面を擦り、箸にテカリを出す磨き作業です。漆塗りやウタレン塗装でない木地箸の良さが一番分かる磨き作業です。お客さん訪問時に木地箸を水に浸したものを用意すると更に艶が感じられて喜ばれることが多いです。 ↓は磨き作業時に撮ったビデオ映像。

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ご主人のスーパー手助けもあって無事に完成した、子供達からジジババへのプレゼントとして作った夫婦箸です。木材を選んでからカンナを当てて整形し、太さ等を使う人に合わせて用意する自作箸もできますが、現在の自分の子供達にはこの位が良い塩梅と感じられた体験でした。

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向山楽器店は琴、三味線の老舗として有名なお店で、現在は中古三味線の販売や修理を主な業務としているとのこと。自分達が滞在していた短い時間の間にも数名のお客さんが大正琴や三味線を持って修理の相談をしているのを目にしました。林立する三味線の棹を目にすると近所迷惑を気にしなくても良い環境があるらなば打楽器・津軽三味線を求めたくなってしまいますが、現実は厳しい。その辺りも盛り込んだ自作本格三味線の話しをまた後日改めてしたいと思います。虎目の紅木いいなぁ...