東京大学の下宿街・本郷に残る鳳明館・森川別館に泊まってみました

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少し前になりますが、東京都文京区にある鳳明館・森川別館に宿泊して参りました。写真は最寄り駅から宿へと向かう途中に通った梨木(なしのき)坂です。この本郷あたりは武蔵野丘陵の東端にあたり坂道が多い場所です。

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地図で見ると鳳明館(赤丸は森川別館の場所)はこのような位置にあります。中央右の青線で囲われた場所は東京大学の敷地で、鳳明館と東京大学の間には国道17号線が走っています。ここはかつて江戸の五街道・中山道と呼ばれ、多くの大名屋敷が建ち並んでいました。東京大学の中心部は加賀藩上屋敷、東京ドームのあたりは水戸藩上屋敷と聞きます。

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東京大学のお膝元・本郷界隈には学生の下宿街や旅館が集まっていました。最盛期には100軒を越す宿泊施設があったものの、時代の移り変わりに合わせて本郷館、朝陽館(経営者が鳳明館の親族)等の有名どころも含め廃業/取り壊しが続き、鳳明館は当時の面影を残す数少ない宿となってしまいました。

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本館(25室)に加え、台町別館(31室)、森川別館(33室)と鳳明館は本郷に3棟を構えており、この日に自分が予約をお願いしていたのは森川別館でした。森川別館は3つある建物のなかでは1番新しい昭和30年(1955年)に建てられました。他のふたつとは異なり初めから旅館として作られた木造モルタル、鉄筋コンクリート造りの確りの建物です。

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玄関に入ると寄木細工の床が現れ、左手の受付の河童の装飾も凝っており愉しい場所です。都内で和風な宿で、お手頃価格で泊まれるとあり外国人旅行者が多いと聞いていたものの、靴棚を見る限りでは自分ともう1人の靴が見えるのみでした。

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宿の方に部屋までの案内を頂き、風呂場等の施設案内や、翌朝の朝食時間、門限等を確認しながら歩きました。途中に見えた洗面台が趣きが感じられ、少し足を止めてしまいました。大都市を中心に宿泊特化型のホテルが雨後の筍の様に誕生している昨今ですが、この様な宿が新たに都心部にできる事は殆ど聞きません。

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梅に鶯、梅の花にはかすかに紅が施されている細工。ヒルトンやハイアットのようなビジネスホテルに泊まるのも良いですが、こちらに投宿する方がよっぽど優雅だと自分には思えます。しかしながら、この日の宿泊者は自分を含めて2組だけというのが現実のようです。

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少し開かれていたガラス扉の間から、1階の洗面所から見えていた紫陽花が見えました。

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洗面所には沢山のモザイクタイル。建物を締め切っての冷房の使用を前提としていないため、到着時には通風のためにか廊下の窓全てが少しづつ開けられていました。雨が降り始めたばかりで、ひんやりとした空気が入り込み、冷房とはまた違った気持ちの良さを感じられます。

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この日に通されたのは「末広」という縁起の良い名称の部屋でした。実はこちらの部屋の中を以前に一度拝見だけさせて頂いたことがあり知っていたので、案内をして頂いた方が部屋のドアを開けている時にガッツポーズを小さくしてしまいました。

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この部屋の天井には水車の断片を利用して拵えた巨大な扇が飾られた部屋なのです。写真には2枚しか写っていませんが、実際には3枚の扇が天井にあり、その大きさが圧巻です。夜中天井を見ていると、地震でも起きたら真上から落ちてくるのではと心配になる大きさでした。

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部屋の窓を開けると東京大学の方向でした。本郷通りの手前に10階建程の集合住宅が立っており、惜しいことに視界を遮ってしまっていました。東大を部屋から見るとこは叶わず。

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友人との食事に出かける前に少し館内見学をしてみたところ、幾つかの場所で装飾が壊れてしまっている場所を確認。放置しているのでなく、もう直せないのかも知れません...。

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玄関内側からの入口の眺めと併せて好きな、夕暮れ時の旅館入り口の佇まいです。学生下宿、軍人、地方陳情団、修学旅行生、外国人旅行者と時代に合わせて色々な人を受け入れてきました入口です。修学旅行の様な大人数での宿泊時には、1階奥の宴会場に布団をズラリと並べて雑魚寝状態にして対応しているそうです。宴会だけでも利用可。

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夕食後に折角だからと東京大学の赤門を見学して宿に戻りました。文政10年(1827年)に旧加賀藩・上屋敷の御守殿門として建てられ、震災、空襲と幾度の危機を生き延び東京大学の象徴となった赤門。社会人なった後で研究会の集まりで自分も一時期訪れていた事があったぐらいで、殆ど自分には縁のない場所です。

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鳳明館のこの看板の渋さよ。雰囲気を壊す横文字表記を付する旅館も多くなりましたが、この硬派な感じが好ましい限りです。開業当初は「鳳鳴館」と名ずけるつもりだったのを、「商人は鳴いてはいけない」と言われ「鳳明館」となったそうな。 

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この日は男性がローマ風呂、女性が千鳥風呂となっていました。ローマ風呂とはどの様な風呂場を指すのかを自分はいまだ分かっていないのですが、壁も床も浴槽もタイルで、風呂場中央の浴槽はハート型でした。そして、湯舟のお湯が熱い、熱い!  

都心部では本当に数少なくなってしまった古風な旅館に泊まれて満足でした。この滞在で気を良くして、8月の会社スタッフが東京に集まる時に鳳明館をを予約をしようとしたのですが、平日でも必要部屋数を押さえられず。自分が宿泊した時には偶然にも客数の少ない時で、静かな滞在時間を楽しめたようでした。