捕鯨の町・太地町、クジラに出会える海水浴場場にてクジラと泳ぐ

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家族4人で熊野地方に行って参りました。熊野は紀伊半島南部に位置する和歌山県と三重県に跨る地域で、人文は非常に古く、熊野三山を初めとする始めとする多くが世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として2004年に登録されました。東名高速から伊勢道等を経由して凡そ600キロの道程を走り、目的地・太地町へやって来たのでした。

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太地町は熊野灘南部に位置し、北から向かっていくと熊野市から新宮市(上の写真左側)まで続く直線的な海岸に続くリアス式の海辺の突出した箇所あり、森浦湾と太地湾よりなる良港を持つ漁師町です。太地町は捕鯨の町として全国的に有名で、古式捕鯨の発祥の地と呼ばれています。

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江戸幕府が開かれ間もない頃の慶長十一年(1606)年、和田家一族が始めた集団捕鯨が始まりと言われる古式捕鯨。延宝三年(1676)年に和田頼治が考案した「網掛突捕法」と言う、大網を張って死後沈下してしまう中大型鯨を岸まで曳く漁法が確立し、沖合に海深2,000メートルの深さのある海で回遊するセミクジラやザトウクジラ等が捕獲されていました。

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捕鯨にまつわる遺産も多く町内に見られます。太地町漁協近くには漁業の神である事代主命を祀った恵比須神社があり、その鳥居は鯨の顎骨を利用したもので高さ3メートル。写真にあるものは以前のマッコウクジラのもので、現在は平成31年春に新たに立てられた鯨の骨鳥居となっています。

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石油開発以前には鯨油が灯火脂として珍重され、欧米諸国が挙って鯨の乱獲に明け暮れていました。湾内に迷い込んだ鯨を捕獲する沿岸捕鯨を主としていた日本にも影響が及び、高緯度北太平洋域の鯨減少により捕鯨を辞める地域も現れ、太地町では明治11年に漁獲減に喘いでいた漁民が無理をして沖合遠くまで捕鯨に向かい100名以上(生存13人、餓死12人、行方不明89人)が黒潮に流される「大背美流れ」が発生。漁村そのものが崩壊する岐路に立たされました。

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明治後期に導入されたノルウェー式近代捕鯨や前田兼蔵氏が開発した三連/五連銃等の成果もあり、太地町の捕鯨は時を経て復活します。太地湾には多くの鯨体処理場や缶詰工場が立ち並び、大資本による遠洋漁業の拠点港を持つ鯨産業の町と再びなっていくのでした。昭和40年代までは町の半分以上が鯨に関わっていた程と言われています。

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時代と共に太地町の漁業も変遷を迎えます。国際捕鯨委員会(IWC)による規制を受け、捕鯨の町と知られた太地町もツチクジラやゴンドウクジラ等の小型捕鯨と、追い込みによるイルカ漁を残すのみとなり、漁業を専属でおこなっている者も現在では100人に満たないまでに減少しています。町自体も高度成長期には水の浦湾を埋め立て、これまで伝統的に追い込み漁をおこなってきた湾を潰し、その漁場を太地湾より町内の北部へ移設しました。

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前置きが長くなりましたが、太地町に家族で訪れた理由は子供達をクジラと一緒に泳がせてあげようという計画を立てて来たのでした。関西ですと毎年夏になるとニュースでも流れる恒例行事のようなもので、ある程度の知名度があるらしいのですが、この「クジラに出会える海水浴場」を自分達が知ったのは旅行開始1ヶ月程前に計画を練っている時でした。

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その海水浴場への途中で"イルカ追い込み漁反対"の団体が、警察の警備の中でデモ行進をおこなっているのに遭遇。幼稚園児の娘に「あの人達は何をしているの?」と尋ねられたので、「イルカを捕まえるのに反対している人達が、イルカ捕まえるの反対と言っている」と応えました。娘年齢を考えれば仕方ないところですが、あまりピンとこず。

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目の前に広がる畠尻湾が太地湾より追い込み漁が移設された場所で、毎年9月から4月までは実際に「追い込み漁」がおこなわれている浜です。此処は隣接する太地クジラ博物館付属の水族館により、平成20年から夏場限定で、湾内でクジラと一緒に泳げる海水浴場としても開放されています。

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午前11時からと午後1時からの2回、そのクジラと泳げる時間が設定されていました。夏の盛りの頃に訪れたので子供達と一緒にバシャンと飛び込み、海で遊びながら時間を待つことにしました。太地町を訪れる1週間前に千葉県外房にて9メートル程のツチクジラ解体作業を息子に見せたばかしでした。それから時間を置かずにクジラと一緒に泳ぐことにしたので、何かしら反応を示すかとそっと見守ることにしました。

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写真中央左上に黄色いカヌーに乗った先導員がおり、その中央寄りにゴンドウ(巨頭)クジラが右側に向かって泳いでいます。海水浴場内に設けられた生け簀より放たれたゴンドウクジラは、鯨のなかでは最も小さく体長5メートル程にしかならないクジラ。全世界の温帯/熱帯の深い海に住み、群れを成している事の多い種類です。主に深海のイカを食べています。

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上の写真は海中の全ての人がクジラに近付こうとしているので、視線の先に黒い背鰭が見えています。自分達は最も近付いて2メートルほどでした。どこにいるのか見回しているとイキナリ顔を出してきたり、すぅ〜とスグ横を平然と泳いで行く黒いクジラ。下のゴンドウクジラへの接近写真は太地町のモノをお借りしています。海のギャング・シャチに近い種で口を空けるとズラりと歯が並んでいますが、ゴンドウクジラが人を襲う可能性は皆無に近いようです。

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ゴンドウクジラと一緒に泳ぐ体験時間が終了すると、カヌーに乗った飼育員に先導されて海水浴場内の生け簀にっ戻って行ってしまい、妻と子供達は生け簀に登ってクジラを間近に見ていました。午前11時の回に続き、軽い昼食を挟んで午後1時からの回にも参加。透明な水の海水浴場で子供達はキャッキャと鯨を追いかける愉しい時間を過ごせたようです。息子に後日、「クジラと泳いだの覚えている?」と尋ねてみたところ、「えっ、あれイルカじゃなかったの? 」との答えでした...。