安来清水寺の門前宿・松琴館に泊まり精進料理をいただきました

f:id:tmja:20180406162912j:plain

夕暮れ間際の石段を寺の大門に向かって登っていました。この日に泊まる宿の人がJR安来駅までクルマで迎えに来てくれたのですが、宿までは自動車道路が通っておらず石段が始まるところで降ろされ、暗い木立のなかの道を200メートルほど荷物を持って歩いていたのです。

f:id:tmja:20181001173235j:plain

今回の島根での宿泊場所は、これまで泊まったことがない場所にしたいと思っていました。翌日には羽田行きの便に乗る予定があったので、米子空港から遠くない場所が良かろうと探してみたところ、有名な京都の清水寺より古い587年創建の"清水寺"の参道にある創業140年の宿「松琴館」を発見。松琴館は「しょうきんかん」と読むそうです。

f:id:tmja:20180406162937j:plain

f:id:tmja:20180406162947j:plain

あたりは既に暗く、夕陽が完全に山の向こうに隠れるのが早いか、自分が宿に辿り着くのが早いかの競走でした。松江の月照寺内の松江藩主六代目・宗衍公墓近くにいる人喰い大亀が「母岩恋し、久多見恋し」と背後から迫ってくるかのような感じがしてしまい、自然と足が早まっていました。

f:id:tmja:20180406162800j:plain

 松琴館は安来・清水寺の門前宿として明治二年に創業と凡そ140年の歴史を持っている老舗の宿で、昔は松琴楼の名前で営業をしていたのだとか。松琴で思い浮かぶ唯一の斎宮女御の歌「琴の音に 峰の松風かよふらし いづれのをより しらべそめけむ」が由来かと思い、聞いてみたのですがハッキリとした答えは得られずでした。

f:id:tmja:20180406163001j:plain

f:id:tmja:20180406162710j:plain

案内を受けたのは運良く参道沿いの2階の部屋でした。6畳と8畳の二間続きの部屋です。どこの門前宿でもそうですが、参道沿いの部屋は行き交う人達の姿や音が部屋から楽しめるので、門前の宿に宿泊している実感が沸きます。

f:id:tmja:20180406163142j:plain

ウェルカムスィーツならぬお茶菓子には、竹の皮に清水寺の三重塔が印刷された包装に入った清水羊羹が入っていました。暗闇のなかを懐中電灯で足元を照らしながら歩き、宿泊先の灯りを見付けてホッとした後の茶菓子は甘く格別でした。

f:id:tmja:20180406163205j:plain

f:id:tmja:20180406163153j:plain

この日は一日中動き回っていたので、食事の前にお風呂をいただく事にしました。到着時は暗くなっており気が付かなかったのですが、宴会もできる大きな和室も複数あり館内は想像以上の広い印象受けました。

f:id:tmja:20180406162726j:plain

食事は自室ではなく別室に準備をされていました。宿泊した松琴館は精進料理が特に有名らしく、宿の名前もパンフレットには「出雲路の宿 精進料理 松琴館」と精進料理が確りと入っている程です。

f:id:tmja:20180406162719j:plain

f:id:tmja:20180406162736j:plain

f:id:tmja:20180406162740j:plain

驚かされたのがその品数の豊富さ。精進料理らしく、擬似うなぎ蒲焼、擬似(ワラビ粉)イカ刺し身を初めとして、胡麻豆腐、柚子香、蕗の薹、茄子田楽、春雨の入った茶碗蒸し、炊き込みご飯に出雲蕎麦と書ききれない程で、みな品の良い味付け。

1番上の長皿の左側の黒いのは「うれしの」と呼ぶ珍味。食べると嬉しくて涙が出ると事でしたが、辛くて涙が出ました。うなぎの蒲焼は豆腐、山芋、牛蒡、蓮の根等を混ぜて一度揚げてから蒲焼にし、うなぎの皮は海苔と非常に手のかかった一品。茶碗蒸しはどう考えても卵を使用しているとしか思えず、宿の方にどの様にして造ったのかを聞くのを失念したのを現在でも悔いています。卵なしではとても、とても出せない味...。

f:id:tmja:20180406162743j:plain

f:id:tmja:20180406162746j:plain

日が昇り、あたりが明るくなったので少し周辺を散歩する事にしました。寺内なのでか静かな一夜でしたが、翌朝も同様に静まり返っているかのようです。宿の窓越しに石段の参道が目の前を通り、まさに参道にある門前宿だと分かります。

f:id:tmja:20180406162803j:plain

宿の前に出てみると、松琴館は3つの建物が並んでいると明るくなって初めて認識できました。1番手前の建屋のガラスが1階と2階で違い、一階には木枠に下半分が曇りガラスで参道を行く人からの目隠しになっています。全面ガラス張りに近い状態に見えますが、上から5枚目の昔の写真に映る建物と比較すると開放感が段違いで、古風ですが現代的な建物だと言うべきなのかもしれません。

f:id:tmja:20180406162810j:plain

清水寺は通常早朝6時に開門です。寺内に宿泊しているため、開門前の誰もいないソメイヨシノ咲く境内をひとり散歩することができました。清水寺は1,400年以上前の用明天皇2年(587年)に尊隆上人によって開かれたお寺で、水の出ない山にて御上人が密行をおこない、清水が湧き出た故事により清水寺との名が付いたそうです。

f:id:tmja:20180406162854j:plain

京都の清水寺にも負けず広く立派な境内で、重要文化財に指定されている根本堂は明徳4年(1393)の創建で、厄除け観音として崇敬を受ける四臂十一面観音が祀られています。 戦国の兵火により多くの建物を失いましたが、根本堂は現在まで変わらずに唯一残りました。

f:id:tmja:20180406162850j:plain

満開の桜と高さ33メートルの三重の塔。文政十年(1827)に一万人の信者の浄財により建築開始。33年の年月を経て完成した総欅造りの多重塔で、庶民の寄付によるためか塔内に3階まで登る構造と設計されており、現代でも予約制にて3階まで登ることができる珍しい多重の塔です。

f:id:tmja:20180406162903j:plain

f:id:tmja:20180406162906j:plain

1時間ほど山内を散策してかた宿に戻りました。昨晩の夕食が素晴らしかったので、早朝に起きて散歩による運動をした位に期待した朝食の時間です。ご主人は関西で料理修行をされた方と伺いました。

f:id:tmja:20180406162858j:plain

朝食後に部屋でひと休憩した後に宿を出発。荷物を両手に持って石畳の参道をえっちらおっちら進んで行きます。今回の宿泊は歴史ある清水寺で満開の桜の境内を独り占めでき、その参道に佇む古い宿も偶然にも独り占めで、手の込んだ精進料理をお腹いっぱいに頂けたと大満足な滞在をさせて頂きました。