コーヒーは飲むポエム、大阪八尾の珈琲仙境「ザ・ミュンヒ」へ

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北回帰線と南回帰線に挟まれた場所、赤道から緯度南北25度はコーヒーベルトと呼ばれる地域でコーヒーの栽培適地とされる熱帯地方で、ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、エチオピアと世界のコーヒー生産量首位を占める国々は全てコーヒーベルト地帯に位置する国々です。このコーヒーベルトからは北に外れてしまいますが、国内でも南西諸島、小笠原などの比較的温暖な地域でコーヒーの少量生産がなされており、昨今の地球温暖化の影響でかロブスタ種(上写真)の実が我が家にも出来たりしています。

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コーヒーが日本に伝来したのは江戸時代初期の長崎出島でオランダ商人よりと云われ、明治ー大正期には嗜好品として庶民にまで広まりを見せ、現在ではEU、米国、ブラジル、中国に次ぐコーヒー消費大国と日本はなっています。自分の写真フォルダで「コーヒー」と検索をしてみたところ、明治42年(1909)に夏目漱石が訪れた大連ヤマトホテルの喫茶店の写真が出てきました。店内には漱石が座りコーヒーを飲んでいたといわれる椅子があるなど、100年前には既にコーヒーは外地であっても楽しめる程に普及していたようです。

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今回はタイ王国より知人が来日した時に関西観光に一緒に出かけた時の話しです。阪神高速を新大阪駅に向かっている時にリモート撮影した三角ビル(安藤忠雄氏設計)のアルモニーアンブラッセ大阪。角の部分がちょうど良い塩梅に撮れたので載せてます。この日は知人と一緒に大阪にある日本一個性的で、尖った喫茶店に訪れようと決めていたのでした。

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新大阪駅でJ君をピックアップして、向かったのが八尾にある「ザ・ミュンヒ」さん。東の北山珈琲、西のミュンヒとも呼ばれる"コダワリ"の珈琲店で、一部のマニアには聖地と化している場所です。自分は以前に一度お邪魔した事があるので二回目の訪問、J君は初めての訪問でした。市内での用事を済ませて、営業時間を調べたところ6時から3時となっていたので、午前6時営業開始→午後3時閉店だとばかしと理解していたのですが、8マンさんより脅威のワンオペ21時間営業だと教えて貰い急遽向かったのでした。

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お店の名前である「ミュンヒ」はひとつ上の写真に映る1976製のドイツ製のマッスルバイク「Munch」に因んだもの。もう一台のコレクション・オランダ製ロータリーエンジンバイク「バンビーン」は車検を通しているので、現在は手元にないとの事でした。年代を感じさせる店内のカウンターには、写真の通りにバカラのグラスや年代物の陶器が並んでいます。カウンター中央のガラスケース内の瑠璃色のカップの前に目をやると何故か値札が書かれていましたが、ミュンヒでの売値でなく、購入当時の値段だとか...。驚くべきはそのカップの下に並ぶ金彩カップ。現在から300年を遡った1710年にドイツ東部で産声をあげたマイセン社製で、美術館にあってもおかしくない年代となる1730年頃のものだそうです。マスターが博物館に貸し出した時の図録と一緒に、金彩コバルト絵付のカップを見せてくれました。

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40ccで10万円の熟成樽仕込氷温コーヒーを筆頭に並ぶメニュー。同行のJ君に「珈琲1杯10万円頼む?」と尋ねると、「任せる」と即答。案の定軽く返されてしまいました。彼は自家用ヘリで会社に通勤するお金持ちなので、面白い体験には大枚を叩く事を躊躇しない人間です。陶器の話しをマスターとしていると、10万円コーヒーは上述の金彩カップで頂けると聞いて、気持ちがだいぶ揺らぎました。少し悩んでから、「マスターのお勧めを2人分お願いします(10万円x2でも良い)」とお願いしたのでした(*´艸`*)ウシシ

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1時間程待っていると華やぎを魅せる古伊万里のデミタスカップをマスターが自分達のテーブルに運んで来られました。コーヒーは確かフジローヤルで細めに挽いて、ネルに豆を詰め込む為に上から押し付ける様にいれているそうです。ミュンヒのマスターは元は牛乳屋?を大阪で経営された後に、所有するバイクを見て貰いたい為に「名車と珈琲が飲める店」を実家にて開業。国内で自家焙煎珈琲店の草分けと称される銀座八丁目にある「カフェ・ド・ランブル」を目指したそうです。「窓に貼られている宣伝"珈琲だけの店"の文句が銀座のお店と同じですね?」と聞くと、静かに笑われていました。

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マスターが店の奥から取り出したにがマイナス3度で冷蔵し続けているコーヒー樽。平成7年6月と描かれた此の樽に入っているのが1杯10万円のコーヒーで、博物館級のマイセンカップで飲めば一杯10万円、菊の御紋の入った受け皿置かれたスプーン一杯で飲むと2,000円也。そんな事は知らされていないJ王子様は樽を見て、「本当に頼みやがったぞ、コイツは」と厳しい視線を此方に向けてきたのでした。オーナーは1,000万回以上再生されているYou Tubeのビデオや、食べログ、グーグルマップ等点数の高さ、TV番組での放送、各種雑誌と沢山の資料を見せてくれました。珈琲談義に加えて文学談義とネタ満載な店主のマシンガントークをJさんに通訳するのだけで四苦八苦。「バイクに乗るのも、コーヒーを淹れるのも皆同じ。コーヒーはポエム」だとマスターは言われていました。

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J君に感想を求めると「デザートワインのよう」。焙煎する前の珈琲豆をウィスキー/ワイン樽に長期間入れて香りや風味を豆に移す方法は広く行われている手法です。ミュンヒの長期熟成氷温コーヒーは独自の製法で、年数を経た珈琲豆を通常の10倍近い量を使い抽出したコーヒーエッセンスを複数種ブレンド。そええを樽で長期冷蔵保管したものだそうですす。普段コーヒー飲む時には、コーヒーの加工前が果物/フルーツだったという事を感じさせないと思いますが、ミュンヒの10万円コーヒーはそんな果実の風味を感じさせる液体です。長期熟成のひしお醤油を冷蔵保管しながらチビチビと使い、最後に瓶の底にこびり付いて残る溜まりに似た風味の、実に不思議な飲み物だと自分には感じられました。

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今年77歳になられるコーヒー仙人ことマスターの田中完技氏と記念撮影をするJ君。マスターのSNS拡散大歓迎という事でそのまま載せています。大阪-東京を現在でも愛車のスーパーカブで走っていると聞き、「自分もカブ90で何度も東京-奈良県間を往復しました」と言うと、田中仙人は「大阪-東京は日帰りしている」との事。自分の東京-奈良間カブ片道走行は平均15時間位でした。東阪一般道520キロx2/法定最高時速60km=17時間チョイなので実現不可能ではないですが、走りも仙人レベルだと分かります。

何事にも凝り性な珈琲仙人の創られるコーヒーは、日本で最も造り手の個性そのものが感じられるコーヒーです。喜ばれること間違えなしですので、そんな"濃い"コーヒーを愉しみに是非ともミュンヒに大勢で押し掛けて欲しいと思います。