京町屋ならではの趣きが感じられる宿「十四春旅館」さん

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京都へ仕事の出張にて1泊2日で出掛けました。2019年1月。コロナのコの字もまだ見聞きしない頃で、京都は訪日外国人の急増で環境汚染ならぬ"観光汚染"とも揶揄される程に沢山の外国人旅行者を目にしました。京都駅から予約している宿を目指して歩き、東本願寺でいつも此の辺りで目にするアオサギ達と暫しの再会を楽しみました。

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東本願寺のお堀には人に慣れたアオサギ達がおり、昼間は鴨川等で餌を見つけ、夜はこの辺りで過ごしているのだと聞いた事があります。餌付けをしている人達もいるらしく、30センチ程まで人が近付いても逃げる素振りもみせません。市内中心部で見られるのが新鮮に映るのか、鷺達は旅行客の格好の撮影モデルとなっているようでした。

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「坊さん頭は丸太町、ツルッとすべって竹屋町、水の流れは夷川♪」と京の数え唄を口にして、自分の覚えている歌詞の最後となる高辻通と松原通を表す「高が知れてる、松どしたろ♪」の南、その松原通と松寿寺通との間にある宿「十四春旅館」にこの日は投宿したのでした。十四春で「としはる」と読ませるそうです。家族で京都に行くと市役所近くの旅館か嵐山に泊まるので、なかなか新鮮な気持ちでした。

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今朱雀の烏丸通を北上し、国道一号線でもある五条通を越えて、一本西に入った路地を進んで行くと京都らしい風情の門構えの建物。間口10メートル程の高塀を持つ京町屋が現れました。建てられたのは明治42年(1909)と現在から100年以上も前の事で、戦後の昭和二十六年(1951)に現在のオーナー家が建物を購入し旅館として営業を開始したのだそうです。

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4代目となる女将さんに案内を受けて、瓢箪形の飾り窓のある小部屋で抹茶とお菓子を頂きました。宿の成り立ちや、昨今は外国からの宿泊客が過半数で、国内旅客は1-2割しかいないこと、旅館内にある蔵の内緒な話し等を色々と聞かせて頂きました。昔は一見さんお断りの宿が時代ですね...

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部屋は二階にある2間続きの「月の間」と名付けられた部屋でした。京間畳で四畳の前室と6畳の奥の部屋が襖で仕切られており、部屋の東側には波打った大正ガラスの窓があり、庭が見られる良い部屋でした。部屋の襖には「月」のかたちをした取っ手があるのを見つけて嬉しくなりました。

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旅館内にある2つの庭のうち、通りに近い方の庭を目下ろせる部屋でした。飛び石が打たれた先庭は大きな灯篭を中央据えられ、その後ろの腰硬板張りがなされた高塀には出格子窓が見えています。庭を俯瞰で見れるというのも一興です。

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十四春旅館の主屋と敷地の奥にある土蔵は共に歴史的景観に寄与しているという理由で、有形文化財に登録されています。深い庇を持つ二階建ての本瓦葺きの蔵は、女将さんから聞くところによると改装されて宿泊できる様になっているのだそうです。黒い漆喰ともあり、少し威圧感がありました。

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外で夕食をとり、戻ってきた時に写真を撮った宿の外観です。先庭の灯篭の明かりが出格子窓越しに見えており、凝った造りの高塀が映える夕景。正月の松の内での訪問でしたので、入口にはまだ正月飾りが見えていました。

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昔風造りの檜風呂です。正月明けの平日という事もあり宿泊者は自分だけだった為か、宿に戻ってから帳場に声をかけると準備をしてくれました。多くの小さな旅館と同じく順番性をとっており、普段はチェックイン時に希望時間を聞いているのだそうです。まわしてある銅製の箍の木桶や風呂桶も外国からの旅客には新鮮に見えることでしょう。

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日の出の明かりを受けた翌朝の部屋。大きなガラス窓は東側(通り側)だけでなく、ぐるりと南側にも続いており障子を開けると随分と開放的な部屋なのだと明るくなってから初めて気が付いたのでした。朝食は女将さんが部屋まで運んでくれと至れり尽くせりです。昨今は盛んに京都の古民家を改修して京町屋の宿/ホテルとして宣伝しているのを目にしていましたが、実は京町屋の宿に泊まるのはこの時が初めてで、なかなか面白い体験ができたと思ったのでした。