常陸野ネストビールの木内酒造さんで、マイレシピ麦酒(自ビール)造り

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縁あってよく訪れる茨城県ですが、また家族4人で遊びに行って参りました。妻より日頃、「あなたはいつも子供ばかりを優先させている ٩(◦`^´◦)۶」と愚痴を言われ続けているので、この日は妻の趣味である飲酒にどストライクな目的地・木内酒造を訪れました。妻には詳細を告げずに自宅を出発。

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常磐道を三郷から走り始めて93.8キロ、水戸市の北にある那珂インターチェンジで降りたところから更に数キロ、東京から1時間少しで到着できる場所に木内酒造はあります。木内酒造の社長のお名前は木内造酒夫(みきお)氏と、まさに酒を造るために産まれてきたと言っても過言でない人物が率いる蔵が木内酒造だと自分は勝手に想像していたのでした。

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地元の庄屋であった木内氏の祖先が酒造りを開始したのは文政六年(1823)、江戸幕府が開かれてから約200年経った頃でした。時の将軍は徳川家斉。数年後には異国船打払令が出され、10年後には天保の大飢饉が襲うと難しい時代に入る手前の時期です。年貢米の余りを酒にすれば、より儲かるのではないかと考えた木内儀兵衛は酒造りを開始します。現在でも木内酒造の日本酒銘柄として残る「菊盛」は天皇家を象徴する菊が益々栄える様にと儀兵衛が名付けたものでした。

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木内酒造は「菊盛」よりもフクロウマークの「常陸野ネストビール」方が有名かもしれません。平成六年に施行された酒税法の改正により、ビールの年間最低生産量が2,000キロリットルから60キロリットルに大幅に減少、地ビールメーカー第1号が北海道と新潟で産声を上げ、現在でも日本全国で増え続けおり、2018年だけで100近い新規醸造所(レストラン併設含む)が新たに加わる程に泡立ちを見せています。木内酒造は1996年に「常陸野ネストビール」を生み出し、翌年には世界ビールコンテストで金賞に輝き、現在では世界50カ国以上で日本のクラフトビールとして愛されるに至っています。

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いけるクチなので試飲(甘酒)中の息子。定員さんより注がれると「痛み入ります」とウケ狙いの言葉を呟くも、空振りでした。甘みとコクが感じられる呑みやすい甘酒で、口に合うらしく子供はお代わりをしていました。

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注連縄が張られているのが釜場で、洗米をしたり蒸したりする場所で、その反対が木内酒造が経営する蕎麦屋さんの「な嘉屋」。突き当たり見えるのは確か瓶詰めの作業場と聞いた記憶が...。地ビールならぬ自ビール造り体験させてもらえる「手作りビール工房」は釜場と瓶詰めの間にありました。

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引き戸を開けると、胴体が褐色のビール仕込み釜が8つ並んでいました。どれもピッカピカです。この日に自分達が頼んだのは15リットで、330ml瓶換算で45本分となります。各地の大小ビール工場での工場見学で概ねの流れは理解しているものの、実際にビールを造るのは妻も私も初めてでした。

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先ずはベースとなるモルト(麦芽=発芽した麦)を決めます。ホワイトエール、ペールエール、アンバーエール、スイートスタウトの4種類から試飲をしながら考えます。また、苦味と香りを変えるホップにアルコール度数(5-8度)、それと色味も最初に決めなくてはなりませんでした。市場には決して出なそうな極端なビールを自分であれば選ぶであろうところですが、今回の主役たる妻が選んだのはホワイエールベースの普通の女性が選ぶであろうと予見される選択肢ばかし...。

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子供達が象のウ〇チの臭いと騒ぎ立てていたホップ群。最近話題のIBUKIや信州早生等の国産ホップは選択肢になく、輸入されたペレット状のホップの匂いを直接嗅ぎながら決めていきます。フタを開けた瞬間に襲ってくる匂いが強烈過ぎて、匂いだけで酔っ払い千鳥足。これと日々向かい合う大手ビールメーカーの研究者は大変だなと思ったのでした。

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娘が蔵の中に充満する臭いを嫌い戦線離脱する中、息子が率先して作業をしてくれました。ラガー、ホウィート、クリスタルの3種類の麦芽をそれぞれ計量し、合計7.5キロを粉砕機で砕きます。ホウィート(小麦麦芽)を見ながら、自分なら小麦麦芽多めの白ビールを試してみたいと心の中で呟くも、呟くだけ...。

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粉砕麦芽をビール仕込み釜にドバっと投入。50度ほどのお湯は既に釜に投入されており、何処の水かスタッフに聞くのを忘れてしまいました。ビールの原料の9割は水です。霞ヶ浦を水源とする茨城県・県南地域の水の味は沖縄と並ぶほど不評です。木内酒造のある那珂市は那珂川や久慈川の流れる"軟水地帯"なので、妻の選んだホワイトエールには良さそうな水だ思われます。

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麦が発芽する時に元来持つ消化酵素で、胚乳に蓄えてある澱粉を糖に変えて成長するエネルギーとしています。後工程でビール酵母添加して糖分をアルコールに変えるのですが、酵母はワガママでサイズの大きな澱粉は嫌い、小さな糖を好みます。此処から先はビール酵母の食事となる小さな糖を用意するための工程です。

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お湯に投入した麦芽を満遍なく掻き混ぜる攪拌作業。水分を吸った麦は結構重く、娘はゴリラのような顔をしながら踏ん張って掻き混ぜていました。

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仕込み釜の下部にある蛇口を捻ると白濁した麦汁が出てきます。これを再び仕込み釜に注いで循環させる「循環作業」を繰り返していきます。釜内の麦芽がフィルターの役目を果たすのだとかで、麦芽が層となるようにユックリ注ぐ様に説明があるも、一気にドバっと麦汁を投入。蛇口から出てくる麦汁がだんだん澄んでくるらしいのですが、全く変化なし。

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遠目で見るとオートミールにも見えなくない釜内の大麦小麦。酵素が大活躍する65度を目指しつつ、循環作業で全体の温度ムラがなくなるようにと、しゃがんではジョッキで麦汁受け、立ちあがっては釜に注いでの繰り返しでした。

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仕込み釜に蓋をして、酵素が麦芽から麦芽糖を造る間40分ほどの休憩になりました。蔵の入口の窓になぜか「よけいな おせわ」と書いていた息子。学校の工作で造った「嗚咽ギター」なる題の自作ギターを持ち帰って来たので、「嗚咽ってナニ」と聞くと…。「ギターの奏でる酷い音で、聴く人がみな啜り泣く、だから嗚咽ギター」との回答。独創的な発想の持ち主なので、「よけいな おせわ」も意味があるらしい...。

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ビール造りは温度管理。温度計で確認をしながら進めていきます。糖化を止めるために温度を80度近くまで上昇させ、酵母を失活させました。普段は諍ってばかしの息子と娘ですが、珍しくも一緒に作業中。最初は蔵内のビール匂が耐えられずに、始終そとに逃げ出していた娘もいつの間にやら慣れてしまったようです。この後にヨウ素試験による糖化確認とビールの甘酒を思わせる麦汁の試飲がありました。

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さぁ、あの象のう〇こを初めとするホップを投入する必要量だけ用意する計量のお時間です。鼻がもげると大騒ぎしながらも計りに載せて準備をしていきます。オレンジピール、コリアンダー、ナツメグにアマリロ。アマリロホップはアメリカの品種名で柑橘系の匂いがするホップで、実物を手にするのは初めてでした。

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右の仕込み釜(糖化釜)から隣りの釜(煮沸釜)へと麦汁を移動させます。息子が持っている緑の漏斗で熱湯を上から注ぎながら、釜下部の蛇口から出てくる麦汁を隣りへ移動させます。最初に出てくるのが一番麦汁。釜の底に残る麦芽粕にお湯をかけて出るのが二番麦汁。麦芽粕は空気に触れるとスグ悪化してしまうので、 そうならない様にお湯を注いで浸かった状態を維持します。

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仕込み釜の底に残る麦芽粕を取り出します。この粕は牧場で動物のエサとなるのだとか。水分をたくさん含んでいるので乾燥させる必要があるも、栄養分が多く農家の肥料にもなるそうです。

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煮沸釜へと移した麦汁を100度近くまで上昇させて30分程煮ます。これは殺菌と投入するホップ等を溶けやすくするため。そして先程準備したホップや副材料を湯気が出る釜にえいや、えぃやと投げ入れていきました。この後には冷却→ビール酵母添加→発酵・熟成と続くのですが、発酵に2週間、熟成に3週間(求めるアルコール度数による)と時間を要するため木内酒造にお任せとなります

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1900年に東京練馬区で育成した麦・金子ゴールデンで醸した「ニッポニア」ビールが店頭にありました。お土産を購入したり、常陸秋蕎麦を食したり、生まれてくるビールの名前や瓶に貼ってもらうラベルの絵を考えたりしながら時間を過ごします。この後に冷却した麦汁を発酵容器に移動する作業があり、試飲の機会がある予定になっています。

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酒蔵の中庭で追っかけごっこをして遊ぶ子供達。娘が抱えているのはサンリオのキャラクター「ジンベイさん」。娘のご寵愛を最近受けており、何処に行くにもリュックに詰めて連れています。我が家の3大アイドル(ぬいぐるみ)は富士ちゃん、赤べこさん、じんべえちゃん。子供達に描かせた自ビールの自ラベルデザインにもモチロン登場していました。

f:id:tmja:20190303184115j:plainホップを加えた麦汁を釜から発酵容器に移動するときに頂けました。アルコールはないももの柑橘系の爽やかな香りにコリアンダーの風味が感じられ、間違えなくビールの苦味と香りがしました。完成したビールは全て贈答品となってしまい、我が家での消費は1本のみ。子供達と自分は匂いだけ、黄金色の液体は妻の喉へと泡と消えにけりです。