JAL2465便(伊丹→奄美)瀬戸内から奄美大島まで続くブロッケン現象

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鹿児島の南、沖縄の手前にある奄美大島行きの飛行機に乗るために伊丹空港へやって来ました。朝9時台は伊丹空港が混雑する時間帯なのか、荷物検査場へは長蛇の列が出来ていました。修学旅行生の一団、ピシッとスーツを着こなしたビジネスマン、大きなリュック背負った外国人旅行者、ざわざわとした雰囲気は早朝の空港に相応しく、何処かに出かける気分にさせられます。

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搭乗券に書かれていた搭乗口はターミナルビルの端っこでした。伊丹空港は普段、伊丹と羽田間の移動にしか利用することがなく、羽田行きは主要幹線ともあってか荷物検査場を抜けて直ぐにある搭乗口から乗り込んだ記憶しかありません。なので、搭乗口18番より向こう側は訪れた記憶が殆どなく、空港の案内図を改めて見てみると18番の向こうには19番から25番とかなりの数の搭乗口が並んでいるのに今更驚いたりしました。

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この日に搭乗する機体は日本航空のボーイング737-800型で165名の旅客を運ぶ中型旅客機。JAL2465便は朝9時25分に伊丹発→奄美空港には11時15分着と2時間足らずの移動です。伊丹上空には晴れ間も見えていますが、天気図を見ると雲が西日本には大きく広がっているようで、上空の窓からの景色は余り期待出来なさそうでした。

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ボーディングブリッジを歩き機内に入ると暗く、駐機中の機内温度上昇を抑える為に庇が閉められているのが見えました。当日の朝に伊丹空港のチェックインカウンターにてクラスJに空席が有ると聞き、1,000円アップグレードをお願いしたのでした。クラスJは座席幅と前後席ピッチの拡大、硬いイヤホンからヘッドセットへと若干の優遇がされる座席です。

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備え付けのJALの運航スケジュールの書かれている小冊子を見ると、9時15分発の鹿児島空港行きと思われるJ AIRのエンブラエル170が隣のゲートからプッシュバックをされ、滑走路へと出発して行くのが見えました。尾翼にある赤い鶴丸は7年程前に経営破綻した日本航空が不評だったロゴの先祖返りを図ったモノですが、よく見ると楕円だったものが正円となったのかと今更認識。それに伴った図案調整なのか少し険のある印象なので、次に鶴丸のロゴ変更をする時にはもう少し柔和な鶴丸を見たいものだと思いました。

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関西の伊丹空港より、鹿児島から400km程南の洋上に位置する奄美大島までの飛行ルートはこんな感じでした。大阪出発後に高度を徐々に上げていき、関西空港、対岸の徳島空港上空を通り種子島上空で方向転換をしてトカラ・奄美群島へと向かいます。和人の中心地と言える畿内から、平安時代までは最果ての地だった喜界が嶋までひとっ飛びコースです。

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伊丹空港には2本の滑走路があります。使用したのは旅客ターミナルから遠い方の長さ3,000メートルの滑走路32Lで、何機か順番待ちをしてからの離陸でした。自機の順番となり80トンもある機体が滑走路にそろりと進入し、正対する瞬間は操縦席の緊張感伝わってくるかようでした。左右の大福型のターボファンエンジンが全開となり、六甲山に向かってゴォゴォと唸りをあげて離陸!

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離陸直後にターミナルビル方面を1枚撮影しました。ピンと翼を広げた姿がコウノトリや鶴の様で優美です。エンジンと主翼が綺麗に視界に入る座席位置にあり、間違えなく自分で狙って座席指定をした場所だと写真を後から見ても判ります。主翼とエンジンが見えないと、どうも自分自身が宙に浮いているかのような不安定さを覚え落ち着かない。

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西宮上空からの神戸中心街が綺麗に見渡せました。実は甲子園球場の上空写真を狙っていたのですが、少しシャッターを切るのが遅かったようです。六甲山地が瀬戸内海へと消えていき、海峡を挟んで淡路島として再び隆起しているかのように見える姿は臥した龍の姿にも見えます。

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須磨海浜公園が見えて来ると本州を離れて南へと向かい始めます。この辺りは源平の戦いで義経が騎馬にて急峻な崖を駆け下り、平家を後方から強襲した「逆落とし」で有名な一ノ谷の戦いがあった場所です。昔は違ったのでしょうが、現在では住宅密集地となっており、この地で本当に鎧兜の武者達が闘っていたとは俄に信じられません。

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明石海峡大橋を眼下に収めながら四国側へ。この淡路島と本州結ぶ全長4km程の橋の上で、襲来した強風&大雨ののなかで二輪車にしがみつき意を決して走った事が以前ありました。この橋を見る度にその事を思い出してしまい、心臓が締め付けられる感じがして思わず身体を固くしてしまいます。

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淡路島上空の畝雲の上にブロッケン現象が発生しているのを見つけました。ブロッケン現象は観察者を通り越して太陽の光が直接差し込み、雲や霧によって散乱され、観察者の影の周りに虹色の光の輪が現われる現象で、山や川等でも条件が揃えば見ることができる光学現象です。自分が記憶している限りでは、この現象を飛行機から初めて見たのはナミビアの首都ウィンフックへ旅客機が着陸する直前でした。妻が偶然に見つけ教えてくれたのです。

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今年に入ってから注意して機外を窓から眺め続け、一月に何度かは必ず発見するできる様になりました。太陽の光とスクリーンとなる雲がある条件下で、太陽のある反対側の窓際に座っている必要があります。雲との距離が離れてしまうと、余程注意して目を凝らさなくては見つけられないので、雲に近づく旅客機の離着陸時に目にすることが多いです。

国内でこの大気光学現象を目にしたのは山中にて行をおこなう修験者ではないかと云われています。槍ヶ岳(3,180m)の開山を果たした僧・播隆の前に出現した話が有名で、西の空に夕陽が落ちる時候にブロッケン現象が山頂の東の空に現れ、阿弥陀如来が雲中より現れ、神仏の啓示を得たとする話しが残っています。

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四国を抜け、九州南部に入っていてものっぺりとした雲は切れずに続き、高度1万メートルの空の上で、搭乗機の影とそれを囲う七色の光輪が雲のスクリーンに写り続けていました。これまで見てきたモノでは最長でも5分程、1時間を超える長い時間に渡りブロッケン現象を見続けられたのは初めてで興奮しながら窓際に張り付いていました。

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屋久島と奄美大島の中間あたりで見られた不思議な光景です。虹とブロッケン現象が同時に現れているのですが、それぞれ原理が違うので、大きさ、見え方等が異なります。虹は雨粒のように大きな水滴を必要とするのに対し、ブロッケン現象は雲の様な小さな粒子を必要とするので、そのふたつが同時に見られる事は非常に珍しいと言われています。今回の光学ショーは特別版だったらしく、上の写真の通りに虹とブロッケン現象の豪華共演!!  写真最下部に瀬戸内海から並走して飛んでいた光輪を纏う機影があり、それを跨ぐかのような虹が雲に大きく映し出されていました。

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目的地の奄美大島に近づくにつれて、高度を落としていくと遠目に見えていた旅客機の影がハッキリと旅客機のカタチを造り始めました。この虹とブロッケン現象の協奏はブロッケン現象が発生している雲の上に雨が降っている時に見られものです。虹を造る雨粒が通常よりも小さく、虹の各色が混ざりあってしまい白っぽい虹として現れるのが特徴で、共に太陽の反対側に現れます(通常の虹は太陽側に出る)。

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上の写真で虹と表現した大きな輪は最初は何か確信が持てなかったものの、雲に近づくと色味を帯びてゆき七色の虹だと確信しました。着陸に向けて高度を落として行く搭乗機が虹色の輪の中心に降りていくかのように下降を続け、ついに大きな大きな虹の輪っかに吸いこまれ、全幅30メートルある機体が雲のなかへと着陸してフィナーレを迎えました。

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写真が上手く撮れていないのが悔しいところですが、雲の下には更に層雲があり、搭乗機の影+それを囲う虹の輪、さらにそれを囲う虹の大きな輪が再び目の前に広がる信じられない光景が再び現れました!  雲に突入した時には「やっと、終わった〜」と大きな満足感に浸っていたものの、万雷の拍手と共にアンコールの幕が再び上がり息をつく間もありませんでした。
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普段であれば数分も続けば驚きのブロッケン現象ですが、これまで一度も見た事のない長時間に渡り続くも、喜界島が目に入ってくる頃にはスクリーンとなるべき雲が周囲より離散してしまい、今度こそ本当に終わりを迎えたようです。

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と、油断をしていると着陸間際に海面に近くに漂っていた雲にブロッケン現象ショーが新たに開始。着陸前に高度を落としながら雲に突入寸前に撮影した一枚です。ハッキリと旅客機のカタチが影となり、機首部分に残る光の輪っか。雲が近くなれば機影が近づき、雲が遠くなれば機影も遠のくを小刻み繰り返し最後には雲に突入して一体に...。

場所は違うのですが機影が大小しながら迫り来る場面を撮影した動画を下に貼り付けてみました。虹やブロッケン現象の光輪は外側から赤橙黄緑青藍紫と並ぶのが常ですが、動画に映る光輪は珍しくも順序が違う( ☉_☉)。副虹かと思うも、主虹+過剰虹でブロッケン現象の光の輪が現れたようです。

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奄美大島の北東に位置する奄美空港へ最終アプローチ。バシャーン、バシャーンと波が砕ける音が聞こえそうな高さで、着陸間際に沢山の岩礁をスレスレかと思わせる高度で飛び越えて滑走路03に着陸しました。太陽と雲、雨による壮大な自然の演出。離陸して直ぐの瀬戸内海から着陸寸前の奄美までを光輪を纏う自機の影と並び飛ぶ光景を見続けられました。この日、この便に乗る事ができて実に幸運でした。10年後でも「あの時は凄い光景が見られた」とハッキリと記憶に残る、素晴らしいフライトでした。