「犬神家の一族」のロケ地、那須ホテル(望月宿、井出野屋旅館)

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プールで逆立ちをして水面に両足を出すポーズ、通称「犬神家」、もしくは「スケキヨ」に興味を持った子供と市川崑氏監督の映画「犬神家の一族」を見たのが事の発端でした。山梨県北杜市で友人が開いていた個展を見に行くついでに、犬神家の一族のロケ地を見に行ってみるかとなり、長野県佐久市にある井出野屋旅館さんにお邪魔しました。

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その井出野屋旅館は望月宿、中山道六十九宿のうち軽井沢/追分から下諏訪に抜ける街道の途中にある、江戸側から25番目の宿にあたる宿場町にあります。この辺りは奈良時代に牧場が拓かれ、古くは馬の名産地として知られていました。毎年旧暦八月十五日頃に朝廷に献上した駒に「望月」の名が付いたのが地名の名前の由来だと伝わり、その望月の牧は宿場町から2km程北側にあります。また、寛保二年(1742)に鹿曲川が洪水をおこし、元は右岸にあった宿が現在地の左岸へと移動しています。上の赤マルが井出野屋旅館さんの所在地。

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井出野屋旅館は街中を南北に貫く中山道に立つ木造三階建ての建物で、望月宿に5軒あった料亭の第二支店として大正期に建てられました。現在まで大規模な改修がおこなわれていない為、往時のの雰囲気がそのまま伝わって来るかのような佇まいをしています。戦後に転業して旅館なり、建物自体も築100年にもなるものです。玄関の上には「井出野屋旅館」、二階部分には「御牧館」との木製の看板が掲げられています。

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入口脇の柱に「当旅館は犬神家一族の映画で那須ホテルとして使用された旅館です」とありました。主人公である金田一耕助(石坂浩二)が那須ホテルの女中はる(坂口良子)と偶然街中で出会い、「ホテルなんて名前だけで、古びた旅館よ」と女中に評された那須ホテルへの案内を受ける場面に建物外観が出てくるのですが、間違えなく同じ建物ですね(*´艸`*)ウシシ ちなみに「電話十六番」と石柱に掲げられており、電話の設置が一般的でなかった頃に既に線が敷かれており、現在の井出野屋旅館の電話番号下2桁も16なのに気が付きました。

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玄関を開けると広い土間があり、その反対側には漢数字が振られた大きな下駄箱がありました。笠置シヅ子歌う軽快な響きの「東京ブギウギ」が映画では流れていましたが何も聞こえず。金田一耕助が宿帳に記入している間にスリッパを下駄箱から取り出す場面を真似て、映画と同じく「十」番を開けている娘っこ。子供用のスリッパが入ってます。

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自分達がお邪魔した日はお客様が少なく、二階全て貸し切り状態となりました。磨き続けられた見事な廊下に白い障子が並び、風情を感じられます。廊下には無数の色紙が並んでおり、街道側の突き当たりには「犬神家の一族」の原作者であり、那須ホテルの宿主役の横溝正史、金田一耕助役の石坂浩二、女中はる役の坂口良子の色紙が並んで飾られています。

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4部屋を使って良いこととなり、そのうちの一室は映画「君を忘れない」で使用された部屋でした。極端に暑さを嫌う子供達にエアコンなしは大丈夫だろうかと案じていましたが、海抜700メートルほどの望月宿は夏でも比較的に過ごしやすく、窓と障子を開くと風が通り抜けて心地良し。料亭だった名残りなのか、どの部屋にも押し入れはありませんでしたし、各部屋に鍵もありませんでした。

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この左右に別れた階段も料亭時代の名残りで、往時は客との同線を考えて、どちらかに一方通行だったのかも知れません。宿の方に「昭和五十一年の撮影時に監督が泊まられた部屋はあるのですか?」と訊ねてみたところ、「外で泊まられて、此処では撮影だけだった」との答えでした。残念。

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階段を左に降りると当たり前ですが1階に出ます。この飴色の階段は只の階段ではない。古舘弁護士の助手・若林が倒れているの発見した女中はるの悲鳴を聞き、金田一耕助がドタドタと駆け下りた階段がコチラ。勿論、子供達と一緒に金田一ごっこを、控えめドタドタでしました( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧

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こちらが事件現場であります! 膨大な遺産を巡り争いが起きると予見した若林は私立探偵の金田一を"那須市"に呼び寄せたのですが、実際に金田一耕助と会う前に毒殺されてしまうのでした。「階段を降りてくるから、死体の役をやって」と代わる代わる金田一ごっこしたバカ親子は自分達です。

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ひととおり金田一ごっこをして遊んだので夕食へ。宿の奥様に勧められたイタリアン。井出野屋旅館から中山道を5分ほど歩いた場所にあるお店で、愉しく夕食を頂けました。自分達の他にお客様がおらず、子供達が鬼滅の刃などのお店に置かれた漫画本に夢中となっているあいだ、大人達はゆっくり食事をすることができました。

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廊下を挟んで見える、布団が敷かれているのが劇中で金田一耕助が泊まっていた位置にある部屋。息子と自分が使用しました。映画では窓の外に広がる湖と対岸に犬神御殿が見えるはずなのですが、彷徨える湖(現在の青木湖)は50キロ程移動したらしく見当たりません。それで仕方がなく、お風呂場で撮影したのがサムネイルの写真です。子供の足以外に余計なモノも映っているので写真をトリミングしております。

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五年程前にお邪魔した「御宿 山城屋嘉左衛門」は営業されていないように見受けられました。ご高齢のご主人がひとりで経営されていたので、もしかしたら廃業されたのかもしれません。井出野屋旅館さんにそんl事を確認しようと考えていたのですが、精算時にすっかり忘れてしまい未確認です。古い町並みを持つ町は何処もそうですが、この望月も古い家屋が減ったように感じられます。

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早朝、カツっと軽い音がしたので廊下を目を凝らして見るとクワガタの子供を発見しました!!  娘はチラッと見ただけで部屋に戻ってしまいましたが、息子はかぶりつきで魅入っていました。このまま放置して置くと誰かに踏まれるかもしれないと心配して、網戸を開けて外に逃がしてやりました。

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荷物持って、軋む階段を降りたら出発です。井出野屋旅館は中山道巡りや映画のファンの方々の宿泊が多いとのことですが、小学生は珍しいと言われながらのお見送りを受けました。次に目指すはSukekiyo upside down foot pointです。スケキヨ・ポイント!! 波立つ湖から突き出た二本の不気味な足。あの名場面のロケ地です。人生の憎しみ、悲しみ、はかなさ、愛が詰まった名曲「愛のバラード」を車内で流しながらクルマを走らせたのでした。