冬の茨城の風物詩と言えば、鮟鱇(あんこう)の吊るし切り&あんこう鍋

f:id:tmja:20190227224045j:plain

茨城県に家族4人で出かけて参りました。きっかけは妻が「鮟鱇(あんこう)を食べた事がない」という言葉で、秘技・あんこうの吊るし切りも見た事がないのだと…( ゚д゚)。どうりで妻から茨城魂が長年感じられないハズだと独り納得したので、連れて行く事にしたのでした。水戸の偕楽園で春の訪れを告げる梅が咲き誇ると、鮟鱇の季節は終わってしまいます。急ぐぞ!!

これから下には鮟鱇が解体されていく写真が多数ありますので、苦手な方はご注意を!!

f:id:tmja:20190302140851j:plain

向かった先は言わずと知れた大洗。「磯で名所は大洗さまよ 松が見えますほのぼのと」と磯節でも有名な関東平野の北東に位置する港町で、東に太平洋、西に涸沼及び涸沼川、北に那珂川と水に囲まれた地で、大洗海水浴場を中心とする海浜観光地域は夏に賑わいをみせる場所です。

f:id:tmja:20190227224057j:plain

昭和十六年(1941)に開業した北関東民の憧れの宿・大洗ホテル。磯節で謳われる大洗さまこと、大洗磯前神社の一の鳥居前に立ち、大小の岩礁と大洗岬を望む絶好の立地にあります。この大洗を代表するホテルで冬季におこなわれているが宿泊者向けイベント「あんこうの吊るし切り」なのです。

f:id:tmja:20190227224022j:plain

この茶褐色した頭の大きいのが鮟鱇(あんこう)です。水深数百メートルで生息している深海魚で、見てのとおりギザギザな歯が発達しており、こんな魚が大きな口を開けて近づいて来てみようものなら...という恐ろしい顔をしております。茨城県で水揚げされる鮟鱇の7割は福島県近くの平潟港ですが、消費地は水戸や大洗等。写真は上手く写っていませんが鼻先にはひも状のモノが垂れていて、これで小魚を誘き出して大口でパクッとやる魚です。

f:id:tmja:20190227224027j:plain

あんこうは全身に水分が多く、軟骨ばかりでブヨブヨしていて、ヌタヌタと滑りがある為にまな板上で捌くのは難しい魚。そこで江戸時代に考案されたのが秘技・吊るし切りでした。あんこうの下アゴをフックで吊るし、水を注いで腹を膨らませた状態で開始されます。先ずは付け根が美味と言われるヒレを落とします。

f:id:tmja:20190227224031j:plain

喉元の上に包丁で切れ目を入れると、吊るし切りで最もダイナミックな工程・皮剥ぎです。皮はコラーゲンが豊富でプルプル。口当たりの良さで、本身よりも好きだと言う人が多いのだと解説がありました。

f:id:tmja:20190227224036j:plain

次に取り出したのがエラ。普通の魚では食べる部位ではありませんが、あんこうのエラは鍋に入れるのだとか。鍋に歯ブラシの先が入っていたらソレです。

f:id:tmja:20190227224041j:plain

それから、腕を突っ込み取り出したのがアン肝。海のフォアグラとも呼ばれています。鮟鱇は深海にいるために餌が少なく、栄養を脂肪として肝臓に蓄えとしているのだとかで濃厚な味わい。鮟鱇の身体と比べると大きい印象で、でろんとした肝が出てきた時には目を離せませんでした。

f:id:tmja:20190227224106j:plain

鮟鱇の胃袋には上下2つの歯が付いていますが、大きな口でガブ飲みした獲物を噛み砕くのではなく、一度胃袋に入った魚が逃げ出さないようにする為の返しなのだとか。

f:id:tmja:20190227224112j:plain

f:id:tmja:20190227224117j:plain

その奥にあるのが卵巣。縦にヒダがあり、そこに無数の卵がビッシリと張り付いているのが見えます。食用になるキアンコウでない鮟鱇には雄が雌に張り付き、脳や心臓までなくなり同化する鮟鱇もいるそうですが、キアンコウは普通の繁殖方法だとか。写真に映る卵帯は最大幅1メートル、長さ10メートルにもなる物で、この卵帯を産み出すのが鮟鱇の出産。

f:id:tmja:20190227223951j:plain

興味津々に解体作業を見つめる娘。最初の方の写真に写る鮟鱇とサイズが違う? 更に言えば調理人も違うというツッコミがありそうですが、それは連日で吊るし切りを見ているからだったりします。最初の方は目方8kgほど、途中からのは重さ18kgと2倍以上の違いがありました。

f:id:tmja:20190227223946j:plain

食用に供される鮟鱇はすべからず雌で、産卵期を控えた冬の期間が卵を抱えながらも、肝も大きくなる最適な時期だとか。鮟鱇には雌雄差があり、雄は上の写真で手に持つ程に小さく、網にかかったとしても買い手がない為に海上でポイッとされてしまったり、カマキリの様に雌にパクッと食べられたり散々な最後が待っているとの話しがありました。ここから身を三枚におろすと一連の作業はお終いです。

f:id:tmja:20190227223955j:plain

f:id:tmja:20190227224006j:plain

解説をしながらでも、20分ほどで鮟鱇の吊るし切りが終了となりました。初めはぷっくらしていた鮟鱇も、スリムな姿になってしまいました。かなり心を痛める映像ですが生物とはこういうものであり、自分達はそれらの生物を食しているのです。自分の子供はツチクジラの解体作業の始終も見た事があったりと更に衝撃的な場面を見てきたせいか、鮟鱇の解体にはショックは全く受けてはいないようでした。この後の食事もデザートを中心にお腹の限界まで食べていました。

f:id:tmja:20190227224013j:plain

江戸時代には三鳥二魚と評される珍味で、鯛と共に鮟鱇は珍重されていました。本身よりも鮟鱇の七つ道具と呼ばれる部位の方が珍重される珍しい魚でもあります。7つ道具ちはヒレ、皮、エラ、肝、胃袋、ぬの(卵巣)にだい身(身肉)。頭と歯、目玉に骨の硬い部分以外は全て食されます。残った骨も軒先に吊り下げて魔除にしたとの話しもあったりします。

f:id:tmja:20190227224000j:plain

奥のパッドに肝とだい身、皮。手前のパッドに胃袋、ヒレ、エラ、ヌノでしょうか…。これらは全て血管を抜くなどの下準備をして、湯通しをします。聞いたところ、吊るし切りしたばかりの鮟鱇は今晩の自分達の食事には供されず、翌日向けになるそうな。会場は血なまぐさいという事はありませんでたが、やはり魚の匂いがしていました。

f:id:tmja:20190227224018j:plain

こちらが大洗ホテルのあんこう鍋。炒った肝を鍋で返して味噌を入れるのが特徴らしい。アンコウ鍋と言えば昔は涸沼で採れるハマグリと昆布で出汁をとり、醤油仕立てにして料亭や専門店で出されていたものか、地元漁師が食していたドブ汁にしたものでした。それを、より万人受けするようにと改良されたものが自分達のテーブルに運ばれてきた鍋で、鮟鱇はフグのように清澄にして深い味わいでした。