深海魚の聖地・戸田港 タカアシガニを駿河湾に放流するイベント参加

f:id:tmja:20180528093740j:plain

静岡県に行って参りました! 本当の目的地は駿河湾を挟んだ反対側の西側だったのですが、仕事のことを書いても仕方がないので、今回の寄り道先・駿河湾東部にある戸田(へだ)港を訪れた時のことをユルユルと綴っていきたい思います。

f:id:tmja:20180622050159j:plain

駿河湾は伊豆半島と御前崎に囲まれた東西/南北60キロにも及ぶ大きな湾で、約60万年前に伊豆半島が本州に衝突してできたと言われています。湾の北側には富士山、愛鷹山、箱根山と著名な火山が立ち並んでおり、その前佇む駿河湾の最深部は水深2,500メートルにも達するダイナミックな地形。

f:id:tmja:20180528093756j:plain

沼津方面より秀麗な伊豆半島の港町や山間部を通り、戸田港まで沼津市より1時間程でやってきました。伊豆半島西側には鉄道は敷設されておらず、海岸線を通る県道17号が開通したのも昭和43年。伊豆半島の東西で趣きがだいぶ違うのはこのあたりの交通の便による事が多く、半島西側には静かな漁村の風情が残っています。

f:id:tmja:20180528093735j:plain

戸田は三方を山に囲まれた港町で、「駿河湾海溝」へと続く海底谷が港入口近くまで迫る深海魚の聖地。その戸田港で特に有名なのが世界最大の蟹・タカアシガニです。タカアシガニは深海200メートル程に普段は生息しており、戸田では底引き網で他の深海魚と一緒に採っています。タカアシガニは世界最大のカニで、大きいものでは全長4メートル、重さも10キロ以上にも達するのだとか。

f:id:tmja:20180528093727j:plain

戸田はタカアシガニを名物にして売り出そうとしているらしく、街中にある「道の駅くるら」でも、高足がにを抱えた子供達の写真が沢山飾られているのを目にしました。

f:id:tmja:20180528093533j:plain

戸部港には小型の漁船が幾つか浮かんでいるだけで、大型バスが停まっている以外は何か催し物があるようには全く見えず静かな漁港の佇まい。晴れてさえいれば港の入江越しに富士山の姿を見られるはずが、この日は曇り日で全く見えず。戸田港は日本一のタカアシガニの水揚げ港で、年間およそ20トンの漁獲量があるそうです。仮に1匹平均を5kgと勝手に仮定すると年間4,000匹になる計算に...。かなり少ない感じがします。

f:id:tmja:20180528093602j:plain

この日はタカアシガニの放流イベントの日。参加する地元の小中学生達で会場が賑やかなってきたところで、軽トラの荷台に薄緑色の大きなバケツで積まれてきた本日の主役・タカアシガニが次々と運ばれてきました。漁港の人に、「このタカアシガニは何処から来たのですか?」と気になったことを尋ねてみたところ、「戸田漁港や周辺の飲食店の水槽で育てた蟹」との答えでした。

f:id:tmja:20180528093607j:plain

小中学生に主催者の商工会議所や漁港の方達から挨拶とタカアシガニ放流の説明がありました。聞こえてきた話しによると、乱獲が続いていた頃に地元の漁師2人が「1年に1度ぐらいは自分達も食べれるように」と開始したのがタカアシガニ放流の始まりで、それに駐在さんが「そんな良いことをしているなら、自分も参加させろ」と加わり活動が広がっていったという話しが耳に残りました。

f:id:tmja:20180528093621j:plain

この放流事業は蟹の生態調査の目的もあり、カニの足に番号を書いた標識タグを結束バンドを取り付けていきます。1番前の足は取れやすいらしく、2番目か3番目の足に取り付けるようにと指示がありました。ちなみに、タカアシガニは脱皮するとタグが取れてしまいますが、脱皮まで1年程要するので、それでも調査の用に足るのだとか。浜辺の岩場で見る蟹と違い素早く蟹走りもしなければ、挟みもしてこないので簡単にタグ(自分のはHDS059)を取り付けられました。

f:id:tmja:20180528093614j:plain

タグを付けた蟹をほいっと持ち上げて、卵の有無、全長と重さの記録をしに測定所へと向かっていきます。周りを楽しませるのに長けた小学生の男の子が蟹を抱きしめる格好をして巫山戯ていたら、その蟹に鼻をハサミで見事に挟まれて、周囲の皆んなを大爆笑させる場面もありました。

f:id:tmja:20180528093626j:plain

蟹を詰め込んだバケツを漁船にみな載せ、参加者は全員ライフベストを着用して漁船に乗り込みむと出発進行です!!

f:id:tmja:20180528093632j:plain

f:id:tmja:20180528093640j:plain

御浜岬と出逢い岬の間を抜けて駿河湾の沖合いに1km程出たところが放流の場所らしく、先に出港していた学生達を乗せた船がお互いの距離を取りながら浮かんでいるのが見えてきました。一瞬でも良いので晴れ間が覗き、富士山が雲間から見えないかと期待していたのですが、最後まで海上で富士山を仰ぎ見ることは叶わず…。

f:id:tmja:20180528093648j:plain

ドンドン投げろとばかりのにタカアシガニを海に放っていきます。戸田港ではタグを付けた蟹をこれまで2,000匹近く放流し、凡そ5%程のタグ付き蟹を回収できている等のお話しを船上で聞きました。タカアシガニは戸田港周辺に基本留まっているかと思いきや長距離を移動する個体もあり、ここでタグ付けした蟹が遠州灘で捕獲された例もあったそうです。

f:id:tmja:20180528093707j:plain

生きているタカアシガニの初めて触ったのが数十分前でしたが、鼻先を摘むように持つコツさえ分かれば簡単、簡単。バケツから蟹を取り出しては駿河湾の海へ投げ入れ、また取り出しては海に降ろしを繰り返します。

f:id:tmja:20180528093700j:plain

タカアシガニが海面に着水してから、海の暗い奥へと沈んでいく様子はどうにも哀しく思えてなりません。周囲を見ると、海面で仰向けになってしまったまま沈下していくカニもおり、「あの蟹は海底に着いたら起き上がれるのだろうか、それともひっくり返ったままなのだろうか?」と考えてしまいました。

f:id:tmja:20180528093711j:plain

準備した100匹以上の蟹の放流が終わると、直ぐに戸田港へと戻って行きます。「養殖?した蟹をイキナリ海に放流した場合には、蟹は自分で獲物を獲得できるのだろうか?」、「既に成長した蟹を放したので、生き残るのは結構な確率なのだろうか?」と普段考えることのないカニに興味が湧いてきました。

f:id:tmja:20180528093720j:plain

戸田港を護る腕のように見える砂州・御浜岬が近づいて来ると戸田港までアト少し。河川での放流経験はこれ迄にもありましたが、船上からの放流は初めての経験。今回は偶然にイベントの存在を知ることができ、タカアシガニ放流に幸運にも参加させて頂き良い経験となりました。快く参加させて頂いた皆様に感謝の意を伝えたいと思います。