日本庭園全国ランキング3位・山本亭に寄り道

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葛飾納涼花火大会(2017年7月25日)の場所取りのために柴又にやってきました。自分が場所取りの役をしなくても良かったのですが、帝釈天のそばに訪れてみたい山本亭という場所があったので勢いよく手を挙げたのでした。

この山本亭というのを知ったのは、島根県の足立美術館で掲示されていた「しおさいプロジェクト」というアメリカ雑誌の日本庭園全国ランキングで、東京に自分のまったくしらない庭園?が3位に名を連ねていたのが気になっていました。山本亭は花火大会の見学場・柴又野球場まで僅か数百メートルの距離、これは行かねばと決心した次第です。

gardenrankings.com

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帝釈天のそば、より 江戸川河川敷側に山本亭はありました。カメラ部品等を製造していた山本工場の創業者・山本栄之助翁の元邸宅。正面に見える長屋門の左側(写真には写っていないですが)に現在でも合弁会社・山本工場が現存していますが、本社機能のみで生産工場は千葉県鎌ケ谷へ現在は移転しているとか。

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自分の父方の実家にも長屋門がありますが、だいぶ違った印象をまず受けました。瓦葺きの平屋で、外観・内観ともに洋風化しているとの説明書き。

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門の両側にある小部屋を内側から見ると、窓にステンドグラスが施されていました。門の外観を見た時に「左右に寸詰まりで、本当に長屋門なのか?」と疑問を持ちましたが、3畳程の空間なので隠居した主人の生活の場等ではなく、門番が常駐していた場所のようです。

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長屋門をくぐり、木造2階建ての母屋へ。戦火を逃れて昭和初期の庭園が当時のままに都内で残っているの数える程しかないらしく、ここ山本亭のほか、旧安田邸と芦花公園内の恒春園に残るのみとか。

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正面玄関は封鎖されていました。玄関内になぜか人力車が置かれているのが見えました。

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玄関脇から、日本ランキング3位の庭と思われる空間が覗き見ることができました。1位の足立美術館、2位の桂離宮と大きな庭園がイメージとしてあったのか、その小ささにビックリです。

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石垣の上に建仁寺垣のある順路に従って進んでいくと裏門?に出ました。説明板が立っていたりと、表門にあたる長屋門側よりも入り口らしい雰囲気がありました。

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母屋に入るために、180度回れ右して再度門をくぐると左手に別棟の茶室がありました。いろいろ見学したいところですが、利用者のみしか駄目。受付の方に後で確認してみたところ、葛飾区運営ともあり、母屋の部屋の部屋/茶室共に破格の料金で半日/全日と貸し切りで利用できると分かりました。これは良い収穫でした。

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入り口の天井の照明。レトロでシンプルな玄関灯。この7灯セットを譲ってもらえないでしょうか?

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入館料100円を受付で支払い、玄関で靴を脱ぎあがりました。蒸し暑い日で風通しを良くするためにか開けられる障子を全て全開にしているようです。目の前の「舞の間」の向こうに赤い絨毯を敷いた通路があり、更に向こうに主庭が見えています。

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通路に明かりが強い場所があったので、見上げて見ると天井に明り取り窓。

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(旧)玄関を入ったところの正面に豪華な菖蒲の襖絵がありました。山本亭のある葛飾区の区花も花菖蒲。もう季節が過ぎてしまいましたが、6月には堀切菖蒲園や水元公園で葛飾菖蒲祭り催されるので有名です。

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その花菖蒲に迎えられて、すぐ右手に「鳳凰の間」と書かれた応接間が目に入って来ます。戦前のお屋敷に多い部屋の配置かと思います。床が組み木細工でできており、窓にはステンドグラスと華やかさのある空間になっています。

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洋間を出て、明るい方に足を向けると庭園に向かって見晴らしの良い空間が広がっています。しおさいプロジェクトの趣旨である家と庭を一体鑑賞を踏まえたとしても、各地の著名な庭園を押さえて個人宅の山本亭が3位というのを確認したくて来たのでした。

日本で最も質の高い庭と建築のコンビを見いだそうとする試みです。わざわざ家と書いたのには理由があります。
欧米では壁面で荷重を支える建築が多く、厚い壁と小さな窓が家と庭を隔てています。そのため庭は家と関わりなく単体で扱われます。日本の伝統住宅は庭に向かって開けており、周囲を生け垣や塀で囲う事で庭も家の一部、青天井の一部屋と言っていい形態です。縁側を介した室内外の行き来やアクセスも簡単です。
また多くの日本庭園は建築の内部から庭を鑑賞する形式で、建物の一部が景色を切り取って美しく見せる額縁効果も伴います。このため内と外を切り離して語るのは片手落ちになると考え、この点を欧米の方々に認識してもらえるよう、建築について特に言及しています。

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主庭の見えるテラス部分に出てみます。縁側の近くに池を設け、高い植え込みが背後にあり、とても街中にいるとは思えない景色ですが・・詰め込み過ぎな気がしてなりません。

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そこまで大きくない庭園面積(270坪)のなかで、遠くに滝を落として奥行きを感じさせるつくりとなっていました。

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「花の間」の脇の通路にいます。花の間ではお茶とお菓子を楽しんでいる人達が沢山おり、写真を撮るのは控えました。採光のための欄間やガラス戸が多用されており非常に明るいです。このガラス戸は1枚1枚波打っているので当時のモノなのでしょう。よく見るとガラス戸の上もガラス欄間?となっていました。

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年代物の電話機や山本工場の帳簿等の昔のモノが陳列されているのが見れました。

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最初に通った「舞の間」。訪問客が多く、沢山詰め込みすぎ感じの強い主庭より、こちらから見える北側の小さな坪庭の方が落ち着ける気がしました。

山本亭は手入れも行き届き、気持ちの良い場所であるのに異論はないものの、ベスト3かというのは納得いかない部分が残りました。2階にあがって花火大会をそこから見られる機会を貰えればベスト3も納得できるのかもと思った訪問でした。

しおさいプロジェクトの日本庭園ランキングは禅寺を省く傾向があったり、いろいろと順位付けへの経緯がありそうですが、定番でない場所の発掘にはよい指針になりそうです。

順位 名称 所在地 形態
1 足立美術館 島根県 美術館
2 桂離宮 京都府 離宮
3 山本亭 東京都 旧個人宅
4 京都平安ホテル 京都府 ホテル
5 養浩館庭園 福井県 旧藩主別邸
6 無鄰菴 京都府 旧山県有朋邸
7 依水園 奈良県 個人邸?
8 桂翠苑皆美 島根県 旅館
9 栗林公園 香川県 旧藩別邸
10 玉堂美術館 東京都 美術館