三沢航空科学館で十和田湖に沈んだ一式双発高等練習機を見る

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今年の夏の話しですが、三沢空港から1km程にある「三沢市航空科学館」を訪れました。三沢と言うと、1931年10月4日に三沢・淋代海岸から飛び立ち、ワシントン州ウィナッチまでの8,000キロにも及ぶ太平洋横断間着陸・無着水飛行の偉業を成したミス・ビードル号が離陸した場所だと思い浮かびます。

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三沢市が交付した原付ナンバーにもミスビードル号と無着陸太平洋横断が描かれており、現在でも自分のバイクに付けたいと思うナンバープレートの筆頭だったりします。三沢空港に愛称名が付くとしたら間違えなく「ミス・ビードル三沢空港」となる程、この偉業を通した米国との交流を高く評価している三沢市。

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その三沢空港で開催された2011年の三沢航空祭では、ミスビードルの復元機による飛行がありました。復元機による飛行は東日本大震災への慰霊及び被災者への激励の意を込めたフライトで、豪快なエンジン音を響かせているのを耳にしました。

航空科学館は航空自衛隊と第35航空戦闘航空団を有する米軍の三沢基地に隣接しており、上空をジェット戦闘機が轟音をたてながら離着陸するのが頻繁に目にします。

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三沢航空科学館は2003年8月にオープンした、大空と飛翔をテーマとした航空と科学の博物館です。入口にはミスビードル号と林檎を手に持つ二人の操縦士のモニュメント、その後ろには巨大ガラス張りの巨大な建屋。近代的な旅客機の航空ターミナルをイメージしたかの様に見えます。

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科学館の入口の向こうには緑が眩しい航空公園「大空ひろば」が広がっています。入場料は中学生以下無料、高校生300円、大人510円となっており、看板上部にはプロペラをモチーフとしたと思われる科学館のロゴマークも見えています。

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高橋みのる氏の作品「飛べ! ACT-G号」 という木工カラクリ機がエントランスに展示されていました。メカニカルな部分が全て木でできており、ボタンを押すとその動き楽しめる作品。高橋みのる氏は八戸に工房を構えられているとか。

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格納庫を模した展示場に朱色の機体ミス・ビードルが収まっているのが見えて来ました。資料によるとべランカ社製の単発機CH300。全長8.4m、全幅14.1m、全高3.4mでエンジンは425馬力のP&W社製。

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横から見るとお腹が出ている(改造)のが分かります。オリジナルのミス・ビードル号の機番号NR796Wで、FAAの機体登録情報で同じ登録番号は上述の2011年に飛来した復元機が自作機として現在登録されていました。

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ビードル号の操縦士、クライド・パングボーンとヒュー・ハーンドンの2人は、朝日新聞社が掲げた太平洋無着陸横断の初成功者に日本人であれば10万円(外国人であれば5万円)の懸賞に飛び付き、ハバロフスクより日本に向かいました。スパイ容疑での拘束、徹底した取り調べを経て釈放された2人は長距離飛行を可能とすべく、5人乗りの後部座席と機体底部を燃料タンクへと密かに改造し、ドラム缶18本(3,600L)分の燃料を搭載して飛行したと解説がありました。

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日本人初の民間飛行士・白戸栄之助(北津軽郡出身)、航研機の工藤富治(むつ市出身)、YS11設計の木村秀政(五戸出身)と青森県が輩出した偉人の説明パネルの上には奈良原式2号。日本で初めて飛行した国産飛行機のレプリカです。その後ろには白戸式旭号も。

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今回の訪問の主目的、旧陸軍一式双発高等練習機展示場へと歩みを進めます。先日訪れた日野オートプラザで偶然目にした天風21号型エンジンが、今回此処を訪れるキッカケでした。実物があるのなら、エンジンだけでは消化不良。全体像も見たいと思ったのです。一式双発高等練習機は立川飛行機が1941年(皇紀2601年)に採用された練習機。1,300機程が量産されるも残存機は少なく、ほぼ完全体で現存する貴重な機体です。

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 2010年8月に十和田湖の湖底に発見された本機は、1943年9月に能代飛行場より高舘飛行場へ向かう途中で十和田湖に着水。水深57mに69年間沈んでいた事により外板に無数の穴が空いおり、尾翼面の羽布も喪失しているものの、海水でなく湖水だったのが理由でか全体的に非常に良く原型を留めています。

プロペラが左右共に後方によれているので、おそらくエンジンを停止した状態で不時着したと推測できます。太平洋戦争時にこのアクシデントに遭遇してしまった乗務員の心情を想像すると見ていて痛々しく、過去の遺物見学と云うよりは慰霊という気持ちになってしまいました。

尾翼の赤い三角マークは八戸の八をデザインしたのか、左エンジンのみ何故か新造部品が組み込まれている理由が知りたかったのですが訊ねられる相手がおらずに分からず…。

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三沢空港側の小川原湖にて水没しているのが魚網に引っ掛かり発見された零戦のひしゃげたプロペラも展示されていました。住友/ハミルトン製恒速回転プロペラ。

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こちらの航研機は大牟田で組み立てられた原寸大模型(本物は羽田空港に投棄され埋まっている)。航研機は帝国陸軍の協力のもとに東京大学設計した長距離飛行世界記録(10,651km)を1938年5月に達成した実験機です。プロペラは日本楽器(現ヤマハ)、エンジンは川崎改造BMW製液冷700馬力、機体は東京瓦斯電気工業(現在の日野、いすゞ自動車の前身企業)。

この機体は空気抵抗を最小限する為に、折りたたみ式風防となっており操縦室も胴体に内蔵してしまっています。その為に離着陸時には操縦士が風防を立てて、身を乗り出して確認したという説明に興味を持っていたのですが、実物をそれを見てやっと理解する事ができました。前方が操縦席からは見えなさそうで、殆ど(目視でなく)計器で飛んでいたのかと思いました。

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前田健一氏設計の日本最初の量産プライマリーグライダー朝日式駒鳥号。骨格は竹で、翼が紙と鳥人間コンテストもビックリな造り。ご子息の方よりの寄贈品とありました。

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展示されている航空機で最も大きい国産旅客機YS-11。この大きさを屋外でなく、屋内展示としているところが凄い! 登録番号のJA8776は東亜国内航空時に導入された機体、愛称は「しれとこ」です。

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機内見学が可能で、そのメカメカしい操縦室もこの通り。

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客室を前方より見た感じです。現在の旅客機と比較すると荷物棚小さく、通路証明が蛍光灯なのが大きく違うところでしょうか。屋内展示のため、鳥の巣の心配も必要なく綺麗な状態です。

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客席後部には非常口とトイレ。水洗式でなく汲み取り式です。

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ドアで隠れてしまっていますが、JAC(日本エアーコミューター)のマスコットキャラクター・ルリー君塗装機があります。ルリー君、鹿児島空港の格納庫以外で見た記憶が最近まったくありません。

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2階の通路には沢山の航空模型が年代別、国別に陳列されいました。また、1階に展示されている機体を上から見下ろす事ができます。

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フライトシミュレータも設置されており、平日だった為か誰もおらず挑戦し放題でした。だいたい、「シミュレータは体験された事ありますか?」との質問で始まるので、「殆どありません」と回答して手解きを受ける事にしています。どヘタがバレてしまうのがオチなので…。

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館内は紹介しきれない程の機体や体験コーナーがあるのですが、時間的制約があり泣く泣く切り上げます。屋外にも米軍のF16をはじめとして真近で見られる&操縦席にも座れる機体が沢山並んでいます。

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そのなかで米国海軍のVIP輸送機のUP-3Aの内部にお邪魔しました。この機体は米軍から貸与されているもので、米軍基地を有する三沢らしい展示と思えます。一昔前のビジネスクラスのような座席が据え付けられており、窓が少なく暗さを感じるものの上官用の機内だという雰囲気が分かります。

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アナログ感いっぱいの計器群で、並ぶ計器からもエンジン4発機と見て取れます。機長席と副機長席の間が広く、立ち上がらないと届かないスイッチがありそうだと思ってしまいました。

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たった2時間程の短い滞在ですが三沢航空科学館を堪能してみました。正直言って時間が足りません。 特に今回のメインだと思っていた一式双発高等練習機は、平日だからか自分以外に人はおらず、十和田湖に意図的に着水したであろう場面が脳裏に浮かび訴えるものを感じられました。

この航空科学館が関東にあれば、年間パスポート購入で度々訪れるところですが三沢と少し遠いのが残念に思えてなりませんでした。次回来る時は、上の写真に写る管制塔ような展望台に行けるぐらいの充分な時間を持って訪れたいところです。