肥後本妙寺の参道に佇む旅籠・廣嶋屋さんに泊まらせて頂きました

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上熊本駅を降りて西へ、肥後本妙寺を目指してテクテク歩いています。本妙寺は加藤清正公の菩提寺として知られる日蓮宗の名刹で、熊本城から北西に2kmほどの場所あります。

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参道入口に大きな仁王門がやっと見えて来ました。ただし、参道を真っ直ぐに進む事は出来ず、案内に出ている迂回路を通る必要があるようです。前回訪れたのと同じく、ひたすら直進すれば夕暮前には投宿できると考えていたので、少し焦り始めました。

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迂回路でもアチコチ工事作業をしているのを見て、やっと気が付く事になったのですが、昨年春に起きた熊本地震の復興作業でした。関東大震災前に建てられた高さ15mある鉄筋コンクリート作りの仁王門にも門柱に亀裂が走り、修復工事中にて立ち入りが禁じられています。

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その震災後にも自分は熊本に何度も訪れており、その被害を自分の目でも見ていた筈でした。この日に泊まる事になっている宿は築140年にもなる古い木造建物です。申告さえすれば登録有形文化財になれるような建屋だと知っていたにも関わらず、予約時に「大きな地震で心配していました」等の一言も言えていない事に思い至り恥ずかしくなりました。

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左右に多数の寺院が立ち並ぶ参道に出ました。ここでも工事と見られる作業者を多数見かけました。宿の女将さんが、部屋が結構埋まっていると最初に言われていたのは、若しかすると復興作業の人達が現場そばで寝起きしているのかもと頭を過ぎります。

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参道の突き当たりに胸突雁木(むなつきがんぎ)と呼ばれる急勾配の石段が見えてきました。

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石段沿いの墓や石灯篭が倒壊したままとなっており、見るも無惨な姿が続いています。この石段までの参道は整備された姿でしたが、この石段沿いは生々しく脳裏に残る光景でした。

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浄池廟の中門から登ってきた道を振り返ります。階段途中の左手には常夜燈楼と明屋という茶屋、右手に今回お邪魔する旅籠・廣嶋屋が見えています。

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出典:長崎大学付属図書館

撮影時期不詳の古写真です。撮影場所はもっと階段よりですが、現在の廣嶋屋の建物もそのままの姿で映っています。

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もう夕方5時をまわっていたので亭主が雨戸を立てて店仕舞いをされていました。予約している旨と、お参りをして直ぐに戻ると伝えて浄池廟を拝観。敷地内の石燈籠や石碑等が崩れていたり、90度回っていたりしていましたが、浄池廟や拝殿は無事のように見えました。

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帳場を抜けて入った場所です。傾斜の急な階段があり、いかにも昔からの旅籠らしい空間。入って直ぐに気が付いたのですが、こちらの宿の清潔さは、これまで泊まってくた数多の旅館でもピカイチです。

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地元熊本出身の女将さんに、2階にある部屋へと案内を受けます。前日は「ザンギ、ばくる」等の言葉が聞こえる北海道にいたのですが、この日は熊本。2,000キロを移動した実感が女将さんの熊本弁を聞いて湧いてきました。

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宿泊した部屋の様子です。参道の反対側にあたる部屋で、外の光が部屋に充分に入り快適。部屋のなかも清潔感に溢れ、緑が多く見え心地よい部屋です。

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ホテルで言うところのウェルカムドリンクとウェルカムスイーツ。日本語だと「お着き菓子とお茶」。長い参道を上がって来たので喉が渇いており、ありがたく頂戴しました。

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窓からの眺めるです。判りにくいのですが、中央左寄りの緑地に熊本城が見えています。女将さんによると熊本城と本妙寺の高さは同じなっているそうです。お風呂の順番を待ってい間に、ひと休憩する事にしました。

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畳の上で夕暮時を迎える至福な時間と油断していると、「ゴ〜〜ン! 」と部屋の直ぐ隣にあるお寺さんの鐘が大音響で突如に鳴り響きました。ゴーン、ゴーンとも響きに驚き、現実に引き戻された気分でした。

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夕食は1階の広間か部屋のどちらでも良いと女将さんが言ってくれたので、部屋でマイペースで頂く事にしてみました。門前とは言え、精進料理ではなく馬刺し/だご汁と郷土色溢れる夕食でした。

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朝焼けを受ける熊本市街地を望みます。本妙寺に眠る加藤清正公も、震災より復興する熊本の姿を此の山より眺めていることでしょう。

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朝6時ちょうどに再び大音響の鐘が部屋に鳴り響き起床。朝御飯は部屋でなく、1階の部屋で宿泊している他の方々と一緒に頂きました。昨晩、女将さんからも聞いていましたが、震災後の工事関係者の長期宿泊が多く部屋が全然空かない日続いているとか。

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帳場でお勘定をお願いして出発です。2人用の部屋と最初に案内を受けて、「2人分の料金を払います」と自分は言っていたので2人分請求して欲しい旨を伝えましたが、1人分だけの宿泊賃で良いとの事。それであれば女将さんの肥後琵琶演奏を有料で昨晩リクエストして、宿泊者全員で静かな旅籠情緒を楽しめば良かったと少し後悔。

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入口に昔掲げられていたであろう看板がありました。廣嶋屋さんは江戸時代の旅籠がそのまま出てきたかのような佇まいで、周囲の雰囲気と併せて、タイムスリップをしたかのような錯覚すら覚える素晴らしい宿。これだけの風情のある宿は他に見当たらないと思われるので、宿泊できたのは実に幸運でした。